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  4. 2019.05.14

『強制不妊救済法』が成立・施行《上》
「違憲」にふれず 補償も320万円

 旧優生保護法(1948~96年)の下で障がいのある人らに「不良な子孫の出生を防止する」などとして不妊手術が繰り返された問題で、被害者への「おわび」と一時金320万円の支給を盛り込んだ議員立法の救済法が4月24日の参院本会議で全会一致可決、成立した。

 救済法は即日施行され、各県で一時金支給の受け付けや相談が始まり、6月にも支給が開始される見通しだ。

 政府は救済法成立を受けて、「政府としても旧優生保護法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くおわび申し上げます」とする安倍晋三首相の談話を書面で出した。

 談話はさらに「このような事態を二度と繰り返さないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、政府としても最大限の努力を尽くす」としたが、各地で続く国家賠償請求訴訟への影響を避けるため、旧法の違憲性や救済策を講じなかったことの違法性には一切触れていない。

 旧法成立から71年たって、ようやく救済策が講じられることになったが、救済法には旧法が憲法の人権条項を否定するものであることへの反省や、被害者が長年放置された責任の所在などの規定はない。また、補償額の低さなどは、被害者が全国各地で起こしている訴訟で問われることになる。

 宮城県内の60代女性が昨年1月に全国で初めて訴訟を起こしたことで、与野党は法整備に動き始めた。法案は与党ワーキングチーム(WT)と野党も入る超党派議連がそれぞれ検討し、与野党の合意を得て議員立法として国会に提出した。

 前文は、被害者が心身に多大な苦痛を受けたとして「われわれは、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」としている。

 救済法の対象は1948年から96年までの旧法施行時に不妊手術を受けた本人で、亡くなった人や家族は含まない。手術記録のない人や、本人が形式的に同意した上で手術を受けた人も含め、家族の証言などをもとに被害認定する。

 救済法は、被害者本人の請求に基づき、被害の有無を認定すると定める。請求期限は法施行後5年間。一時金を受け取っても訴訟の継続や提起は制限しない。救済制度について周知を図るが、本人への個別通知はせず、自己申告が前提だ。

 厚生労働省によると、約2万5000人が不妊手術を受けたとされるが、氏名など個人が特定できる手術実施を裏付ける記録は約3000人分しか残っていないという。

 被害弁護団は「国の謝罪」が明記されておらず、一時金も「相当に低額」と批判。配偶者や遺族も救済対象とするべきで、本人への個別通知も必要だとしている。不妊手術をめぐる国賠訴訟は7地裁で20人が原告となっており、原則3000万円以上の支払いを求めている。