新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 憲法/平和
  4. 2019.05.21

『強制不妊救済法』が成立・施行 《下》
裁判長が弁論で憲法判断を示唆
今月28日、仙台地裁で判決

 旧優生保護法(1948年~96年)によって、「不良な子孫の出生を防止する」と不妊手術を強制された人は一万数千人にのぼるといわれる。

 同法は、ナチス・ドイツの断種法の考え方を取り入れた国民優生法を前身とし、知的障害や精神疾患遺伝性疾患などを理由に不妊手術を強制することを容認しており、議員立法によって全会一致で成立している。戦後、参院議員が発案した法律の第1号だった。

 旧法に対しては70年前後から障害者が抗議の声をあげ、国会も80年代には旧法の問題点を認めていた。しかし、96年に不妊手術に関する条項を削除して「母体保護法」に改定されてからも、国会と政府は問題を放置してきた。

 強制不妊手術は92年まで続き、国際社会の批判を背景に国会は96年、旧法の見直しを提案。謝罪や補償をめぐる実質的な審議なしに、母体保護法に改めている。

 その後、被害者への補償を市民団体などが求めてきたが、昨年1月に手術を強制された宮城県の60代の女性が国に1100万円の損害賠償を求めて提訴するまで、国会は救済に動かなかった。

 国家賠償請求訴訟はこれまでに札幌、仙台、東京、静岡、大阪、神戸、熊本の7地裁に男女計20人が起こしており、審理が続いている。今月28日、仙台地裁で一連の訴訟の最初の判決が言い渡されることになっている。

 強制不妊救済法は5月24日成立したが、原告・弁護団では「成立を評価する」(全国被害者弁護団共同代表の新里宏二弁護士)としつつも、「国の法的責任を認めておらず、一時金(320万円)も少ない」(同)として訴訟を継続。「当時は合法だった」と請求棄却を主張している国側も裁判を継続している。

 注目される仙台地裁判決に向けては昨年6月13日に開かれた第2回口頭弁論で中島基至裁判長は、旧法について「合憲か違憲かの判断を回避するつもりはない」と憲法判断に踏み込む意向を示した。審理の途中でこうした意向を表明するのは異例とされ、判決がおおいに注目される。

 新聞報道によれば、中島裁判長は憲法13条が保障する幸福追求権に基づいて子どもを生む自己決定権や人格権の侵害の有無が手術の違法性の判断基準になると指摘。旧法に対する憲法判断が、手術の違法性の有無を判断する前提になるとの考えを示したという。

 さらに裁判長は、救済措置を怠り続けた政府と国会の「立法不作為」について、国に判例解釈についての詳細な主張を求め、国は「立法不作為の違法性は、国民への権利侵害が明白で例外的な場合にのみ認められる」と反論したという。

 判決によっては、国の責任が厳しく問われることになるが、その場合の対応にも注目しなければならない。