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  4. 2019.06.04

「金融審議会報告」の示すもの
『年金100年安心』の破綻
                             
安倍政権の無責任な対応

 「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」(以下、報告書とする。金融庁のホームページの報道資料で全文検索できる)が6月3日、公表をされた。

 そのタイトルは、「高齢社会における資産形成・管理」である。これは、麻生太郎金融担当相が金融審議会に諮問し、提出された報告書である。 麻生大臣は、当初報告書を評価していたが、「老後資金2000万円必要」とマスコミで報道されると、「100年安心の年金」という政府の今までの説明とは食い違うではないかとの批判が噴出した。参議院選挙を前に、争点になるのを避けたい安倍晋三首相も自民党執行部も、政府の方針ではないと火消しに躍起になった。そして、麻生大臣は「報告書は受け取らない」と6月11日の記者会見で表明し、責任逃れに終始をしている。

年金だけでは老後は送れない
 今回の市場ワーキング・グループの検討の課題は、現在の金融資産は貯蓄に回っており、「証券投資(株式や債券、投資信託など)」を行っている割合は2割以下で、これを「長期・積立・分散投資」にいかに誘導するかということである。そのための現状分析の中で、老後資金は2000万円程度必要という結果が出されたのである(本紙、3面の「経済監視塔」も参照)。


 現状分析自体は、そのとおりと言っていい(図を参照)。

 年金は夫婦2人で、月額19万1880円となっている。「平成29年度厚生年金保険・国民年金の概況」(平成30年12月厚生労働省年金局)によると、平均受給額は厚生年金で月額14万4903円、国民年金で5万1565円となっており、夫が厚生年金、妻が国民年金のみの場合とほぼ近い額となっている。

 厚生年金のみ(共済年金受給者等は除く)の受給額の分布図を見る(2017年3月末現在)、総数約1590万人中、月額10万円以下は約371万人(23%)、月額15万円以下は約833万人(53%)となる。

 国民年金のみの受給額の分布図を見ると、総数約716万人中、5万円以下は約311万人(43%)となっている。そもそも国民年金のみの場合には、40年納付の満額でも月額約6万5000円に過ぎない。そのため、国民年金のみの収入の場合、生活保護を受けざるを得ない人が増える。

 最新の生活保護受給世帯・者(2019年3月現在)は、世帯で163万6334、人員で209万578人であり、世帯・人員ともに若干減少している。しかし、高齢者世帯は一貫して増え続け89万3560世帯(約55%)となっている。

 報告書のモデル世帯の場合で、今後老後に2000万円が必要であるとすれば、前記のようにモデル世帯以下の年金しか受給できない高齢者は2000万円の確保困難であり安心して老後を送れないことになる。その意味では、報告書は正直なのである。

抜本的改善と医療・介護の無償化
 自公政権は、04年の年金制度改革で、これで「100年安心」だとうたった。内容は、年金保険料の上限を、厚生年金で保険料率18・3%(労使折半)、国民年金掛金月額1万6900円とする(17年度から)。基礎年金国庫負担割合を2分の1に引き上げる。マクロ経済スライド(高齢者人口が増えると年金が下がる仕組み)の導入であった。

 しかし、マクロ経済スライドを適用し年金支給額は消費税増税などによる物価の上昇にも達しない改定に止まっている。「100年安心」どころか、今も不安だらけの年金制度である。 

 政府は、5年ごとに「年金財政検証」を行い、公表することになっている。検証の会合は3月で終わっており、6月にも公表できるはずなのに、いまだに公表していない。厳しい結果を予測し、参院選以降に引き延ばすとみられる。またもデータ隠しである。

 以上から、老後の生活のためには、年金制度の改善、とりわけ低年金の人には最低保障年金(新社会党は月10万円を目標に掲げている)の実施が求められる。併せて、医療・介護の無償化も検討しないと、今後年金だけでは生活できない人が膨大に発生する。