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  4. 2019.07.30

武器爆買いが招く違憲の大軍拡 ~強力な軍縮運動の構築を~
武器見本市に過去最大の抗議
                         武器取引反対ネットワーク 代表 杉原 浩治
『死の商人よ さらば』

 6月17日、千葉県有施設である幕張メッセで武器見本市「MAST A s i a 2 0 19」の開催が強行された。千葉県への貸出中止を求める申し入れや街頭アピール、ネット署名などの取り組みを続けてきた「安保関連法に反対するママの会@ちば」「幕張メッセでの武器見本市に反対する会」が呼びかけた大抗議アピールには230人が集まり、ヒューマンチェーンやダイ・インによる抗議行動を繰り広げた。

 武器見本市への抗議としては過去最大規模となり、11月18日から同所で開催予定のより大規模な総合武器見本市「DSEI JAPAN」への強い牽制となった。

 MAST Asiaは日本で3回目、DSEI JAPANはロンドンで隔年開催(今年9月にも開催)される有名な国際武器見本市DSEIの初の海外出張版である。軍事費を膨脹させている日本の武器市場が世界の軍産複合体を引き寄せ、武器見本市が武器の爆買いを促進している。

 最近目立つのは、日本政府「売約済み」の武器展示の増加だ。2018年11月に東京ビッグサイトで開催された「国際航空宇宙展」には、F35A戦闘機の実物大模型やイージス・アショア、ノルウェー製(JSM)や米国製(JASSM、LRASM)の長距離巡航ミサイルの模型などが並んでいた。また、海上自衛隊が導入の検討に入ったとされる米国のジェネラル・アトミクス社製の無人攻撃機「アベンジャー」も置かれていた。

 とりわけ重大なのは、武器の爆買いが「専守防衛」を葬り去る違憲の大軍拡に直結している点だ。トランプの米国に追従して買う武器が、従来の在日米軍と自衛隊の「矛と盾」という役割分担を変質させ、日本が矛の保有に踏み込む構図が見えてきている。

空自の「戦闘攻撃機」化と長距離ミサイル保有国化

 空洞化しつつも維持されてきた「攻撃的兵器不保持原則」にいよいよ手がかかり、「専守防衛」という大原則が投げ棄てられつつある。まさしく「先取り壊憲」の最終段階と言えよう。いずも型護衛艦をF35B戦闘機を搭載する本格的な空母に改修することに加えて、さらに特徴的な2点を挙げておきたい。

 第1に、航空自衛隊の「戦闘攻撃機」化だ。従来の主力戦闘機だった201機のF15は対地・対艦攻撃能力を持たず、領空を侵犯させないことを主任務にしており、対地・対艦攻撃が可能なF2は148機に留まっていた。

 しかし、昨年12月の新防衛大綱の閣議決定と同時になされた、F35を147機とする閣議了解により、F35がF15のうち近代化改修できない99機と入れ替わることになった。F35には長距離巡航ミサイルJSMが、改修されたF15やF2には同じくJASSMとLRASMが搭載される。

 これで、空自のすべての戦闘機が敵基地攻撃能力を持つ「戦闘攻撃機」に切り替わる。

 F35の配備について空自の幹部は、「町の交番に特殊部隊を配置するようなもの。F35を使いこなせるようになったら、周辺国は日本を専守防衛の国とは信じなくなるだろう」(2018年4月23日、『朝日』)と述べていた。すさまじいデータ統合能力により、戦術面で圧倒的な優位に立つとされているからだ。

 憲法9条を持ち「専守防衛」を標榜する日本が米国に次ぐ世界第2位のF35保有国になり上がるのは、あまりにも異常ではないだろうか。しかも、F35は欠陥を抱えた未完成機でもある。

 見過ごせないのは、改修不能だが退役時期が未定の旧型のF15(99機)を、F35購入費の原資に充てるとして米国に輸出する構想が水面下で動き出していることだ(2018年12月24日、『日経』)。

 しかも、米国は輸入したF15の東南アジアへの売却さえ検討しているという。日本初の戦闘機輸出であると同時に、米国を経由した東南アジアへの迂回輸出にもなりかねない。

 第2に、日本は公然たる長距離ミサイル保有国になり上がる。外国製品の購入に留まらず、国産開発や既存ミサイルの射程延伸により、計7種類もの長距離ミサイルを保有しようとしている。

 JSM、JASSM、LRASMに加えて、射程最大1000㌔の高速滑空弾や新空対艦ミサイルの開発、12式地対艦誘導弾や空対艦ミサイル「ASM3」の射程延伸を図ろうとしている。これらが「島しょ防衛」を口実にすることも見逃せない。

 私が危惧するのは、これほど露骨な自衛隊の変貌に平和運動が十分に対抗できていない点だ。一方で、幕張メッセで連続開催してきた「MAST Asia」が、来年は「千葉は東京から遠い」という見え透いた口実のもとに東京開催となったように、市民運動の成果も出てきている。

 違憲の大軍拡という既成事実をはね返す反軍拡=軍縮運動をつくり出すことが求められている。


       『MAST Asia』に230人がダイ・インで抗議