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プライバシー権の重要性に背向ける
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日本国内に居住する全ての人に12桁の個人番号を割り振り、国や自治体が管理するマイナンバー制度はプライバシー権を侵害し、違憲だとして、神奈川県と東京都の住民計230人が国を相手取って、個人情報の収集差し止めや慰謝料などを求めた訴訟の判決が9月26日、横浜地裁であった。
関口剛弘裁判長は「制度に具体的な危険性があるとは言えない」などとして請求を棄却した。
原告のうち180人は10月9日、東京高裁に控訴した。控訴に当って原告弁護団は、「横浜地裁判決は憲法13条で保障されているプライバシー権を極めて狭く捉えており、現代社会におけるプライバシーの重要性に背を向けたものだ」とするコメントを出した。
マイナンバー違憲訴訟は他に、仙台、東京、新潟、金沢、名古屋、大阪、福岡の7地裁で闘われているが、判決は横浜地裁が初めて。神奈川訴訟の原告230人は8訴訟で最大。
判決は、プライバシー権を「個人情報がみだりに第三者に開示、公表されない権利」とした上で、マイナンバー自体はプライバシーに属する情報を含まず、ひもづけられる個人情報は制度の運用前から行政機関で利用されていたものとした。
また、制度は行政の効率化など公共の利益にかなうものであり、漏洩(ろうえい)など不正に第三者に開示、公表されることを防止する法制度上の仕組みが設けられているとして、「プライバシー権を侵害しておらず、違憲とは言えない」と結論づける不当なもの。
不当判決だが、原告のマイナンバー制度の危険性等の具体的な立証・陳述を受けて漏えい等の事例は認定し、「安全措置によっても、個人番号及び特定個人情報の漏えいを完全に防ぐことが困難であることは否定できない」と認め、制度の運用に伴う弊害防止に向けた検討・改善の必要に言及している。
原告・弁護団は判決を受けて、「政府が、マイナンバー制度は合憲の判断が示されたとして普及・利用拡大を進めることは許されない」とコメントした。
概算要求2100億円 ~マイナンバーカード普及へ~
顔写真、氏名、住所、生年月日の個人情報が記録されたICカード「マイナンバーカード」の普及に躍起となっている政府は来年度予算の概算要求で2100億円の関連経費を計上している。
マイナンバー制度に関与する総務省、法務省や内閣官房が要求しているもので、このうち総務省のマイナンバーカード発行経費を中心とする1800億円は、本年度の7倍になるという。
安倍内閣は2022年度末時点で、ほとんどの住民がマイナンバーカードを持つことを目指しているが、現時点の発行枚数は1780万枚で人口の14%に止まっている。
デジタル・ガバメント閣僚会議(議長=菅義偉官房長官)は「マイナンバー制度のメリットをより実感できるデジタル社会を早期に実現する」とし、21年3月から医療機関健康保険証としてマイナンバーカードを使えるようにするなど普及策を提示している。
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