2020.01.01
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軍事費を教育、福祉、環境に回す |
ロベルト・サモラ弁護士講演 |
スペイン語で「豊かな(Rica)海岸(Costa)」を意味する「コスタリカ」は、中米に位置する国で、面積5万1000平方㌔㍍は九州と四国を合せたくらいの広さ、人口は420万人。首都サンホセには285万人が暮らす。
東のカリブ海と西の太平洋に挟まれた国土は、「中米の楽園」と称され、多種多様な動植物が生息する美しい国で人々は平和に暮らしている。平和な暮らしの源は、「軍隊を持たない非武装永世中立」を宣言する憲法にある。
コスタリカでは、1948年の大統領選挙の不正問題から野党勢力・市民が決起、6週間の内戦で2000人を超える死者が出たが、市民軍が勝利した。翌49年の憲法改正で「常備軍」の保持が禁止された(ただし、国境警備隊は保持し、自衛権行使が必要な場合に限り再軍備できる)。
常備軍の廃止によって軍事費を教育や福祉に回すことができるようになり、教育の無償化や国民皆保険制度を実現、環境のために予算を振り向けてきた。2017年の国家予算の24・0%が教育に配分されている。
これによってコスタリカは、2016年の「地球幸福度指数」(HPI)が世界140カ国中1位に輝いた。
また、1955年に隣国ニカラグアから傭兵軍が侵攻してきたが、警察部隊の対抗やOAS(米州機構)の仲介で侵攻軍は武装解除し、常備軍の復活にはいたらなかった。コスタリカは、「平和が文化になった国」ということができるだろう。
常備軍を廃止したコスタリカは1983年に「積極的永世中立」を宣言する。それは、米国のレーガン政権がニカラグアの左派政権に対抗するためにコスタリカ領内に米軍基地の建設を求めたのに対し、当時のモンへ大統領は「中立宣言」をして拒否した。
こうしたコスタリカの平和・福祉・環境国家への歩みは、ドキュメンタリー映画『コスタリカの奇跡―積極的平和国家のつくり方』に紹介されている。上映会とコスタリカのロベルト・サモラ弁護士(39歳)の講演「軍隊を持たない国の暮らしと教育」が12月6日、東京都内であった。
映画とトークの夕べ「9条は世界の希望―武力によらず平和をつくる」は、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催した。
ロベルト弁護士のトークは、映画『コスタリカの奇跡』をさらに掘り下げ、「平和・福祉国家の実現は奇跡だったのか」と問いかけ、非武装国家への歩み、そして軍隊を持たない国の発展を語る。
ロベルト弁護士は、学生時代にコスタリカ大統領が米主導のイラク侵攻を支持したことは「憲法違反」として政府を提訴した経験を持つ。日本をしばしば訪れており、憲法9条にも深い理解と関心を持つ。講演の要旨を次号から掲載します。 |
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