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  4. 2020.10.06

戦後75年、被害側と加害側の立場
”責任”ある行動には勇気がいる

首相は辞任したが「無責任」さを感じた

 戦後75年目の今年の夏、被害側と加害側のそれぞれの「8・15」を見ながら、人間魚雷の″回天″や″神風特攻隊″や″肉迫隊″、″護郷隊″から慰安婦問題や徴用工問題など、数多くの負の歴史と被害者の呻き声が脳裏をよぎった。

 その直後、安倍首相が辞任した。戦後培ってきた民主主義を最大権力で後退させ、汚点と不祥事続きの7年8カ月を″辞任″の形での幕下ろしには「無責任」さえ感じた。最先端医学で持病の治療を受けつつ、普遍的価値の「平和人権大国」の「美しい国」のために、失策の穴埋めに責任を果たそうとするのが「首相」のあり方ではなかろうか。

 個人的なことだが、私が勤め始めた1998年からこれまで何人かの方が亡くなっている。ほとんどが手遅れ状態になるほど、ガムシャラに仕事をこなした人たちであった。友人もいれば、恩師や先輩もいた。だが、重病であっても、亡くなる直前までも組織や同僚たちの感情を取り乱すことはせず、最後まで「自分の役割と責務」に一貫していた。

 就職した当初は「人間」のもろさが許されない厳しさに圧迫され、ひ弱い私は社会生活は無理だと何度も思った。幸いに師匠や同僚たちに支えられながら、誠実に生きることが「責任」だと知った。

 その「責任」のおかげでCovid19の有事でも社会が安定的に動いている。現場の医療従業者や物流・配達関係者が社会を支えなかったら我々の生活は成り立たない。教員たちも経験のないオンライン授業や動画収録で徹夜続きの一学期を送った。心身の疲弊で倒れた同僚もいる。3月から押し寄せる山積の業務に不安がる学生らの対応のため、不眠不休で黙々と窓口を守った現場の事務方の責任力を目の当たりにしながら、このような各自の責任ある行動が日本の原動力に繋がっているのだと強く感じた。

 なのに、「首相」は議員生活は続投しつつも重荷となった首相職は辞任した。長期執権の歴史より、潔く退く勇断か、必死に責任を全うする姿が見たかった。いろんな不祥事で辞任しても、韓国の蝋燭デモのような動きは日本にない。日本人は淡々と受け止めている様子だ。

平和人権大国として隣国との交流への外交発揮の叡智を期待する

 私的に韓(朝鮮)半島との不幸な近代史に多くの長州人が関わっているだけに、平和的和解のための″結者解之〃(けっしゃかいじ=自分が起こした問題や過ちは自分で解決すべきだ)の叡智を安倍首相に期待していた。だが、むしろ嫌韓勢力の拡大を放置し、力の論理で物事を見る社会的風潮を煽り立てた感がある。安倍さんが唱えてきた″グローバル″社会とは欧米追従の100年前と本質的に変わらないため、近隣諸国との外交に躓いている。

 かつての植民地であった韓国は、今や日本の支配下や韓国朝鮮戦争後の最貧国ではない。Samsung・SK・LG・Lotteなどの企業は半導体や電気製品、自動車やIT・通信・建設・石油化学・造船などで世界市場を占めている。

一方、韓国映画の『パラサイト』が外国語作品初のアカデミー賞四冠を受賞し、K-pop歌手のBTSが米ビルボードチャートシングル1位など、今や韓国文化はポップカルチャーの主流として世界を魅了させている。それらを国際舞台に導く原動力の一つは在外コリアンパワーである。

 とくに、250万人を超える在米韓国人の中にはアメリカ社会の要職に就いたり、地域リーダーとして活躍する人も多い。その在米を含む750万の在外コリアンは祖国の負の歴史の加害国であった日本の歴史総括に注視している。

 在米韓国人は、アメリカ社会で培った「人権意識」や「正義」「人道主義」的ものさしで旧日本軍慰安婦間題や徴用工問題を計っている。黒人やマイノリティ差別と闘ってきたアメリカ人権団体や市民運動組織との繋がりも強い。

 皮肉にも植民地時代や戦後の祖国を離れて海外に移住した韓国人やその子孫たちが、いまや国外の防波堤として祖国と世界を繋ぐグローバルパワーになっている。競争力が激しいグローバル社会への牽引役を担っている在外コリアンのコミュニティーは、韓国人に越境パワーの求心力作用もする。

 韓国政府は在外同胞を抱え込む政策で、国外からの多文化エネルギーを国家発展の動力にしている。成長過渡期の現象は少なくないが、100年前の社会とは著しく異なる。

 日本は、東アジア諸国との相互同伴発展を直視し、真摯に話し合える機会を重ねながら信頼基盤を構築することが得策に繋がる。激動する国際社会、周辺諸国とのパートナーシップを強めつつ、「人権平和大国」としてグローバル社会でのイニシアティブを発揮してほしいものだ。