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2014.01.01
「雇用ルール」破壊ノー
規制緩和は解雇と正社員ゼロが狙い
弁護士 水口洋介

 
 

 安倍内閣は「雇用ルール」の全面的な破壊の準備を急ピッチで進めている。産業競争力会議、規制改革会議を中心に議論され方向性が決定され、それに沿って労働政策審議会(公労使三者の審議会)でも労働側の反対を無視して法案がつくられている。
 すでに規制改革会議等が立法工程表を発表している。@2014年中に派遣法改悪、A2014年中に労働時間法制を見直して、2015年に労基法改悪、Bジョブ型正社員の雇用ルールを整備し、2015年にジョブ型正社員の解雇緩和、C有料職業紹介事業の規制緩和も2014年中早期に実施することとされている。さらに、成立した国家戦略特区法で、D有期労働契約の5年の無期転換ルールを2014年通常国会で見直すと定めた。
 派遣法改悪法は、2014年通常国会に上程されることは必至である。この改悪案は、派遣先企業が派遣労働者を3年ごとに入れ替えれば、永遠に派遣労働者を利用できるというものである。
 他方、派遣労働者は3年までしか同じ派遣先でしか働くことができなくなる。改悪が実現すれば、派遣は臨時的一時的な業務のための例外的な働き方ではなくなり、企業は正社員を減らして派遣労働者を大幅に増員することになる。正社員は派遣労働者に置き換えられ、若者は正社員として就職する道が狭められ、不安定な派遣労働者として働くしかない状態になってしまう。
 労働時間規制の改悪も狙われており、長時間残業を放置しながら、残業代不払いを合法化する労基法改悪が準備されている。一定の年収以上の労働者について、労基法37条などの適用除外を定めることや、企業の残業代支払い義務を免除する制度を設けることが検討されている。長時間残業で「うつ症」などのメンタル不全となる労働者は増加し続けており、未だに過労死も増加している。にもかかわらず、労働時間規制を緩和することはけっして許されない。
 今、求められていることは、1日8時間労働を遵守して、人手が不足するなら労働者の採用を増加させて失業を減らすワークシェアリングである。
 ジョブ型正社員については、勤務場所や職務などを限定した正社員(限定正社員・ジョブ型正社員)を導入して、ワークライフバランスや女性が働きやすい労働条件を定めると宣伝されている。しかし、規制改革会議等での内部では、ジョブ型正社員は、担当職務や勤務場所がなくなったら、それだけで解雇ができる制度として検討されてきた。したがって、ジョブ型正社員は、正社員を解雇しやすくする手段である。
 本来、ワークライフバランスの実現は、ジョブ型であろう通常の正社員であろうと、非正規労働者であろうと、すべての労働者に保障されなければならない。ジョブ型正社員だけを切り分けることは、結果的に解雇の緩和とジョブ型以外の正社員のよりいっそうの長時間残業を押しつけることになる。
 労働法は交渉力の弱い労働者の権利を擁護する法律である。これに基づいて、戦後の労働運動や争議が積み重ねられて、現状の労働法が制定され、裁判所の判例も漸進的ではあるが、労働者保護の方向で進んできた。
 しかし、今回の労働法制の規制緩和は、「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型」に大幅に転換しようとしている。この「労働移動」とは、まさに労働者の解雇や派遣労働者の増加を意味しているのである。

 すべての労働者、労働組合が力を合わせて、国民に広く訴え、安倍政権の労働法制規制緩和を阻止することが、今こそ求められている。

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