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2014.02.04
「労使自治」で春闘潰し
『14年版経労委報告』批判
新社会党労働運動委員会委員長 宮川敏一

 
 

 労組封じ込めの基本方針経団連は1月15日、経営側の春闘指針となる『2014年版経営労働政策委員会報告』(経労委報告)を発表した。報告書では、冒頭からアベノミクスのスローガンと同様に「デフレから脱却と持続的な成長の実現に向けて」を引用して、「労使パートナーシップ対話」と「労使自冶」を強調する。労働組合を縛る経営側の基本姿勢が現れている。
 安倍総理は年頭記者会見で「今年はデフレ脱却という勝利に向けて攻める番だ」と、安倍裁量による政治介入で春闘の決着をさせる意気込みを見せた。これらに対し麻生財務相は、「賃上げ交渉なんていうのは、これは政治家の仕事ではありませんな。これは、本当は労働組合のやることだと思う」と皮肉交じりに労使交渉を揶揄した。安倍首相の裁量で景気の実感とベア獲得を考えてはいけない。
 13春闘がそうだったように、安倍首相の経営側への働きは功を奏せず、一部大手の一時金上乗せがあった程度で、中小・地方への波及効果は皆無だった。
 しかし、再び14春闘でも「この春こそ景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けたい」などと、政治文句で労働者を持ち上げる。
 そこで経営側の経営春闘対策である、『経労委報告』の登場だ。経労委報告は1974年の「大幅賃上げの行方研究会報告」が始まりで、労働組合の賃上げ要求を封じ込める経済界の基本的方針になってきた。
 序文に米倉昌弘経団連会長の発表趣旨が載せられている。「自社の発展を通じて経済社会に貢献する。その原動力が労使間の信頼と協力≠ナあり、春の労使交渉・協議は、さまざまな課題について認識を共有し、自社の未来について互いの知恵を出し合う」など、労使強調の下に法人税引き下げ、社会保障制度負担軽減、雇用関係を取り巻く規制緩和を進め、そこに「企業が世界で一番活躍しやすい国づくり」が展開される。内外からの投資は加速され、企業は成長する。労働者を足場に、労働者の生活改善など微塵も語られない。


【第1章】我が国企業を取り巻く経営環境と経済成長に向けた課題
 東日本大震災の復興など「本格的な成長軌道に乗せるための諸課題」を6項目にわたって報告している。その中で、@原発再稼働を促し、安全と環境には目もくれない。A法人減税にこだわり25%まで引き下げると主張する。自らがつくり出した非正規雇用に事足りず限定社員の推進、B裁量労働の大幅緩和で労働時間・深夜労働の規制除外、C産別最低賃金を速やかに廃止させる、D改正労働契約法の無期転換ルールを最大限活用する。


【第2章】多様な人材の活用

 雇用・労働市場の改革は、名ばかりの人材活用を提案。@女性の活躍躍進には、産休の有給化など具体策が欠如、A障がい者雇用は国の支援頼りで直接雇用は打ち出さない、Bグローバル人材の確保は、TPPを見据えた外国人材確保と定着を力点に置く。


【第3章】2014年春季労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢

 経営側が目玉に据える項目である。4項目からなっており、賃金引き上げの核心部分が載せられている。
 @「労使パートナーシップ対話」充実の重要性。いかに労使協調を保ち、その上に立って、「労使自治」の名で企業内交渉をまとめることを推奨する。
 A「総額人件費の原資は自社の付加価値」と決めつけ、生産性基準原理の決着を進める。
 B「賃上げとは何か」では、賃上げは「年収ベースでみた報酬の引き上げ」と捉えるべきで、賃金は労働力の対価を否定する。
 C春に実施される賃金引き上げを「定期賃金改定」として捉える。私たちは「生活に根ざした賃金要求」であり、労働力の再生産費として規定しているのと正反対。
 D労働側のスタンスでは、「個別企業交渉で論議することが重要」と決めつけ、労働組合の横並びを否定する。
 E中小企業における賃上げの目安は、「大手を上回るのは限定的、労使双方の慎重な議論をすべきだ」と、あくまで個別決着を迫る。
 F非正規雇用労働者の賃上げにも、自社に適した対応を求め、他の影響を否定する。
 G経営側のスタンス。政労使会議の共通認識を取りまとめる。アベノミクスによる企業収益の改善が雇用の拡大と賃金引き上げにつなげるとして、企業の収益があっての賃上げで、労働者の生活に根ざした賃金要求は否定する。
 H労使交渉・協議は、労使で経営状況を議論するのが先で、賃金は自社の支払い能力に基づき判断・決定されるのが原則として、横並びの決着を否定する。
 I経団連の主張
◆わが国従業員の賃金は低下していない。
◆マクロの労働分配率は報酬決定の基準にならない。
◆内部留保の確保は企業の持続的成長に不可欠などと開き直り、1997年以降の賃金低下を否定する。


 14春闘の賃上げは、ベアなど政府が促し、経営側が容認、労働組合が追従。三者一体でベア獲得のポーズが演出されているが、アベノミクスで賃上げはできない。まして、中小、地方の賃上げは否定の立場だ。
 4月から3%増税される消費税は労働者の生活を困窮させる。円安から自動車・電気産業など海外展開している大企業が空前の利益を上げ、鉄道・サービス業も好調だ。しかし、経営側の本心は内部留保への蓄積しか考えない。
 経営側は、「自社の経営状況に即して決める」、「支払い能力論に限りがある」などと抵抗する。賃上げの代わりに、総額人件費を抑えようと、ベアとは無縁の非正規雇用労働者を拡大する動きもでてくる。
 賃金は闘い取るもので、与えられるものでない。具体的行動から労働者の共闘を広げ、その勢いが春闘勝利へ導く。



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