長時間働いても残業代などは払われない「労働基準法改正案」の要項が、3月2日に開かれた労働政策審議会で「おおむね妥当」のお墨付きがつけられ、塩崎厚労相に答申された。
8年前の第一次安倍内閣でも同様の制度を断念したが、「今度は違う。グローバルに活躍する高度専門職に絞っている。前とは全くの別物」と安倍首相は強調する。労働側に「同意を得ることや、働き過ぎを防ぐしくみを強化した」ことを挙げ批判をかわそうとする。
しかし、安倍首相がどんな弁舌でかわそうとも「成果が出るまで働かされ、長時間労働につながることは目に見えている」ことは周知の事実だ。安倍内閣は当初、「派遣法改悪案」を3月中旬、「残業代ゼロ法案」を3月下旬に提出予定していた。しかし、「政治と金」の問題が次々に発覚して、閣僚の辞任と疑惑が相次ぎ、自民党の思うように国会審議が進まない。
それでも、6月の閉会までに「社員が働きやすいと思える環境を整える選択肢が一つ増える」ことを根拠にして、政財界が一体となって強行突破を狙っている。
「残業代ゼロ」制度は、「年収1075万円以上のみが対象」「時間ではなく成果で賃金を図る制度」「プロフェッショナルの制度」などと様々な宣伝文句で「時間外ゼロ」をソフトに見せかける。
しかし、労働政策審議会の冒頭に、厚労省役人から「1075万円で区切ることはないだろう」と規制の撤廃を持ち出している。このような発言は誰にも覚えがある。労働者派遣法の「直接雇用の原則」を解禁させ、専門業種の拡大、派遣期間全廃まで実現させることなどと、うり二つだ。「残業代ゼロ」も年収300万円、400万円の営業マンに拡大しない保証はない。
自民党の圧倒的支配下でも、07年のホワイトカラーエグゼンブションは審議すらさせず廃案、14年の派遣法改悪案も2度廃案になった。国会監視と地域からの共闘アクションで「残業代ゼロ」制度をつぶそう。
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