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2015.04.07
大企業賃上げが“春闘”ではない

  

 15年春闘は、ヤマ場となる3月18日、自動車や電機など第一次主要産別で一斉に回答があった。
 政労使会議でつくられた官製春闘は、生産性基準原理のレールに乗って賃上げ回答された。自動車や電機など利益を上げている企業は、ベアを含めた賃上げ回答が続いた。18日の夕刊から19日の朝刊は「春闘大手ベア・過去最高続出」「春闘は高額回答相次ぐ、中小への波及が焦点に」などと賃上げ水準が高まったことを、はやし立てた。


 気をよくした安倍首相も回答日当日の参院予算委員会で、「賃金上昇は過去15年間で最高となった昨年の水準をさらに上回る勢いだ」と自賛し、経団連榊原定征会長も「収益の拡大を従業員へ適切に還元してわが国経済に貢献するとの企業の姿勢を明確に表した」と追従した。
 政財界が歓迎ムードを表した一方で、連合の神津里季生事務局長も「昨年を上回り継続した賃上げを獲得したことは、要求金額からすれば充分とは言えないものの、スタート時点において、15春季生活闘争の意義・目的を果たしうる内容と受け止める」談話を発表。
 首相にしてみれば「アベノミクスにより景気は好転し、所得増につながっている」「所得の増加は大手から始まり、中小企業や非正規の従業員にまで及んでくる」とトリクルダウンを宣伝する。役人のホンネが出てくる「所得が上がったのだから、消費税率を10%に引き上げることを受け入れるのは当然」と決めつける。
 しかし、春闘回答の勢いは18日まででストップした。19日回答の運輸、流通などの労働組合では、ベア回答が一部を除いて消えている。政労使とマスコミ一体で「賃上げ水準を上げたベア回答」に満足感を示しているが、19日以降の春闘回答記事はテレビ、新聞紙上から消えた。一握りの大企業の賃上げが春闘ではない、まして波及効果が失っている春闘にベアの広がりはあり得ない。
 19日に賃上げ回答のあった私鉄の表示を見た。とてもじゃないが賃金引き上げ金額の理解ができない。賃上げについて「制度に基づく賃上げ実施」「定昇相当分+α」「制度に基づき、基本給改定」、一時金については「4カ月+α」「実質現状維持」。これらの表示方式はどこの産別も変わりなく「金額表示はしない」ことを労使で確約している。これらが標準化していることに課題がふくらむ。
 20日以降、中小の賃上げ回答が出されてきている。ほとんどがベアなど論外で、せっかくの賃金引き上げムードが消えてしまっている。全ての労働者に行き届く国民春闘から大企業春闘に様変わりしている。それでも、中小の労働組合で頑張っている労働者は少なくない。15春闘は続いている。


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