これまで2度廃案となった労働者派遣法改悪を成立させようとする安倍内閣はなりふり構わず衆院で採決を強行した。
6月19日11時、労働者派遣法の改悪案は衆議院厚生労働委員会で、自民・公明与党の賛成多数で可決、それから1時間も経たずに本会議に緊急上程、「国民抜き」の採決をした。
維新の裏切りで通過
19日の労働委員会で安倍首相は、「一般に派遣労働という働き方は、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面がある。今回の改正案は、派遣労働の道を選ぶ人には待遇を改善し、正社員の道を希望する人には道を開いていくためのもの」と平然とウソを繰り返した。傍聴した労働者は怒り、「労働者をモノとして扱い、企業の調整弁にするな」「労働者の生きるすべを奪うもの」「財界の要請を丸呑みした悪法」だと泣き出す人もいた。
与党は24日までの会期を9月末まで大幅延長、参議院でも審議時間を確保して絶対に成立をさせる構えでいる。
安倍政権に急ぐ理由がある。民主党政権時代の2012年8月に民主、自民、公明などの賛成多数で成立した改正労働契約法(同じ場所で5年を超えて働く契約社員を対象に、本人の希望に応じて契約期間を定めない無期限の雇用に変えることを企業に義務付ける)実行の前に財界の強い要請も受け、待ったなしの労働者派遣法改悪を安倍政権は背負っている。
厚生労働委員会の審議入りに協力をした維新は、野党共闘を裏切った。「民主党に恩義はない。党利にかなえば自民党にすり寄ろうが国民は文句を言わない」と維新幹部は開き直る。しかし、維新が旗印にした「同一労働同一賃金」の法案は骨抜きに終わった。同じ仕事をする派遣労働者と正社員の賃金水準をそろえる「同一労働・同一賃金法案」は、もともと、民主、維新、生活が共同提案した。原案の「待遇と均等の実現を図る」という文言を与党と維新で「待遇の均等および均衡の実現を図る」と「均衡」を加えて修正した。いわゆる「バランス」をとる文言が加えられたことで、正社員と派遣労働者が同じ賃金を得ることはできなくなった。それでも維新は、自民の「骨抜き法案」に同意した。
解雇の金銭解決に道
法案審議の最中、6月16日、政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は雇用や農業、医療などの分野で規制緩和策の答申を安倍首相に提出した。焦点は不当に解雇された労働者に支払う「解決金制度」について導入の検討を答申、政府は「骨太方針」とともに月内に閣議決定する。これは、いつでも自由に首切りができる経済界の意向を丸呑みした悪法だ。
「解雇の解決金制度」は、過去の政権も導入を目指したが労働側の反対で見送られた法案だ。経済界の意向だけを重視する安倍政権は、その要望に応えて再び導入を目指す。
労働現場では、環境が悪化している。ボーナス、退職金の廃止、交通費、福祉厚生関係などの総額人件費が次から次へと削られている。賃金を安くする企業の分離分社化、グループ化が標準化されている。企業は、正社員採用の見送りで、慢性的人員不足に陥る。この流れは2000年代初頭から続いている。30歳代から40歳代層の社員は、派遣社員や期間社員に置き換えられ常態化している。
経済界は、「同じ場所で5年を超えて働く契約社員を対象に、本人の希望に応じて契約期間を定めない無期限の雇用に変えることを企業に義務付ける」法制を画策していた。
安倍政権は、安保関連法案と共に「5年を超えて働いても、3年で雇い止めできる」労働者派遣改悪の法制化を至上命令にしてきた。労働法制改悪に抗する闘いは終わっていない。参議院の審議を控え、国会、地域で労働法制反対のアクションを巻き起こそう。
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