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2016.06.14
定年再雇用で賃金引き下げ
違法判決

  

 定年退職後の再雇用で「仕事の内容は全く変わらないのに、賃金が引き下げられたのは理不尽」として訴えていた全日本建設運輸連帯労働組合関東支部所属の横浜市の長澤運輸の大型生コンのタンク車を運転する3人の原告に勝利の判決が5月13日、東京地裁(佐々木宗啓裁判長)であった。


 判決は「賃金引き下げを違法」と判断し、会社に定年前と同じ同水準の賃金を支払うよう命じた。
 13年4月1日から施行された65歳までの再雇用が義務化(改正高年齢者雇用安定法)され、それまでの継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み(労使協定で「能力」「勤務態度」「出勤率」などの基準を定めることにより、再雇用する従業員を絞り込むことが可能とした)を原則希望者全員を再雇用する。立法主旨は60歳で定年退職して賃金も年金も支給されない高齢者が増えるのを防ぐ狙いで、多くの職場で労使間協定が結ばれるなどして、定年再雇用希望者を厚生年金受給開始年齢の65歳まで雇用することが義務付けられた。
 しかし、現実には定年再雇用で働くことで、同じ仕事をしていても定年前の賃金、一時金、手当も大きく引き下げられる。これらの現状に、「厚生年金の受給開始年齢が引き上げられ、働かなければ生活ができない」と賃金の引き下げがあっても働き続ける労働者が多くつくられていった。 
 これは、01年4月1日から厚生年金支給開始年齢が段階的に引き上げられ、それに伴い多くの労働組合で、厚生年金受給開始までの再雇用(定年延長の実現には至らなかった)制度が労使協議のなかで決められてきた。
 実態は再雇用賃金を決定する目安に使われたのは6、7割の賃金で、高年齢雇用継続給付金や在職老齢年金で国が支援し、月額が厚生年金受給資格限度を上回らない28万円以内を総額にしていた。
 09年以降は、支給年齢が65歳になり、定年者のほとんどが定年再雇用によって継続雇用されている。
 しかし、賃金が大幅に引き下げられる現状に多くの労働者が不満と改善を訴えていた。そんなとき労使協議ではない、裁判判決で「定年再雇用による賃金引き下げは違法」の判決が出たことは驚きだけではなく、改めて定年再雇用制度の在り方に労働組合が正面から向き合うときがきた、と考えられる。 (宮川)


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