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2016.09.13
在籍出向から転籍強要
相鉄バスをめぐる攻防<上>

  
 団交しながら提案を強行


 相鉄労働組合は現在、相鉄ホールディングス梶iSHD)が強行している「労使合意の一方的破棄」「強制復職・配転」「交渉軽視」「不誠実団交」などについて、労働委員会と本訴の闘いを併行して進めています。 SHDは2014年3月、同社から相鉄バス鰍ヨ在籍出向している組合員(約200名)に、@相鉄バスへ転籍(SHDの退職金のほか加算一時金を支給)、A特別退職(SHDにある制度を準用)、B復職(SHD籍だが再出向先は相鉄バスでなくなる)のいずれかを選択(実施は2015年9月15日)させる「バス事業に関する支出削減策」なる提案を組合にしてきました。
 現在、相鉄バス鰍ヨ在籍出向しているのは、それまでSHDが事業持株会社としてバス事業を営んでいましたが、2010年に純粋持株会社となるためバス事業を分社。グループ内企業でバス事業を行っていた相鉄バス鰍ニ統合する際、労働者についてはSHD籍のまま在籍出向する労使合意を交わしたことによるものです。
 同時に、在籍会社のSHDと出向先会社の相鉄バス鰍ニの労働条件の差異については、「出向補填」という名称で手当金を支払うことで労使合意しています。


 3年で労使合意を破棄


 バス事業はどの会社も楽観できる経営環境ではありませんが、相鉄の場合、分社をし、バス会社で働く在籍出向者の定年退職による自然減で収支改善を図ろうと労使で確認したことから分社政策に応じたのです。SHDは提案理由を「出向補填費が将来にわたって大きな負担となっている」「将来にわたってバス事業を存続させるため」としていますが、在籍出向のときから補填費が発生することは分かっていた話ですし、どこに配転しようがSHD籍労働者に賃金を支払わなくてはなりません。バス職場から外してもホールディングス全体を鑑みれば削減にはなりません。
 さらに、SHDは過去最高益を更新し、今すぐ提案を実行しなければ企業の存続が危ぶまれる状況ではありません。「バス事業の存続のため」とは言うものの、会社が選択肢として示した「特別退職」や「復職」をみんなが選択した場合、いったい誰がバスを運転するのでしょうか? 同業ではどの会社もバス運転士が足りず、常に募集をかけている状態なのにもかかわらずです。
 組合は会社に対し「出向の継続」を選択肢に加えるよう求めていますが、今日まで拒み続けています。さらに、組合がSHDに労使合意に至るまで提案内容は実施しない約束を求めても、「労使協議はかならずしも合意を必要としない」と断言しました。これは、2009年に鉄道を分社したときにも使った会社の常とう手段です。在籍出向を約束したにもかかわらず、たった、3年数カ月後に一方的に、労使合意を踏みにじるやり方に組合員は会社に対し失望感が広がっています。


 提案のめば大きな実損


 SHDは団体交渉に応じながらも、提案内容の実施を強行してきています。2014年11月から12月にかけては、組合の制止を聞かずに該当社員に対し会社説明会を実施、2015年5月には将来の進路の選択を迫る「選択申出書」を配布、同年6月15日までの提出を求めました。
 組合は当該職場対象に分会、支部、本部で相談窓口を設置。進路の選択に悩む組合員の相談にあたりました。転籍に応じれば加算一時金は得られますが、向こう10年分(定年退職まで10年間未満の者は残存年数)の補填費(差異分)を先払いするだけで、残余年数が10年以上のものは当然損をすることになりますし、とくに運転士の賃金は、事務所員や整備士よりかなり低い賃金体系になっていて、大きな実損をすることになります。 特別退職はある程度の加算金は出ますが、これもまた、残余年数をすべて補償するものでありません。では復職かといえば、長い間バスに携わってきた労働者がバス以外の会社に出向に出されて働くことは相当の勇気がいることです。「転籍に応じなかったから不当な配転をされるかもしれない」と、不安になっている組合員も少なくありませんでした。
 組合は、会社が労使協議中にもかかわらず施策を強行実施することは不当労働行為にあたるとして2015年6月神奈川県労働委員会に申し立てを行いました。個別労使による交渉と併行して、労働委員会の場でも争っていくことを決断したのです。
 しかし、申し立てたからといって、すぐに解決することはありません。団体交渉でも会社は主張を変えず、「提案を理解してほしい」の一点張りでした。こうした状況のなか2015年9月、組合との合意のないまま提案を強行実施したのです。出向者207名のうち、97名が相鉄バスに転籍、1名が特別退職の拡張適用で会社を去っていきました。会社の提案に75名が「拒否」を意思表示し、相鉄バスに在籍出向を求めています。


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