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2017.01.31
「働き方改革」アベノミクスの失政を糊塗
17春闘と私たちの対抗軸 <上>

  
                中岡 基明(全労協事務局長)

 
「非正規雇用をなくす」「長時間労働をなくす」というかけ声のもとに「働き方改革」の議論が始まっています。非正規雇用問題の解決と長時間労働の解消は多くの人が望んでいる今日の労働問題の焦点といってよいでしょう。しかし、「息を吐くように嘘をつく」安倍首相であるので選挙のためのアドバルーンにすぎないと言う人もいます。最近「貧困・格差・差別を許さない総がかり運動」を提唱している全労協事務局長の中岡基明さんに情勢の認識と対抗戦略を語ってもらいました。

 安倍政権の目論みは日本社会の「総作り替え」にある。それは14年衆院選、16年参院選の勝利がバックボーンになっている。与党他の改憲勢力が両院で3分の2勢力となり、内閣支持率も60%にならんとする。第一次安倍内閣では「戦後レジームからの脱却」路線に懐疑的であった経団連とも関係修復も進み、榊原会長体制になってからは蜜月ともいえる。


 非正規労働者の取込みに


 そんな状況を背景に傲慢ともいえる政治手法で集団的自衛権・戦争法を強行可決した。「政労使会議」から「連合」を切り捨てる手法もこの政治構造にあるのではないか。
 そこで「働き方改革の全面化」である。それは安倍政権の弱点を覆い隠すためにあると考える。
 アベノミクスの失敗、とくに第二次アベノミクスといわれる16年6月の閣議決定の「一億総活躍プラン」=成長と分配の好循環メカニズムなどは実現の見込みもなく、その失敗を糊塗するために超大型補正予算と、公共投資と低所得者へのバラマキで対処するしかなかった。
 そもそも60%近い支持と言っているが、個別政策においては支持を失っているし、対抗馬がいない中での消極的支持が現実だ。
 そこで長期政権を維持するためには、今「働き方改革」を前面に押出し、労働者・市民を分断対立させ、非正規労働者の取込みを図る必要としているのが安倍政権であり、不安定政権が現実の姿だ。
 また、現状は、貧困・差別(非正規)の拡大を放置できないまでに日本社会を疲弊させてきた。生活保護の世帯の高止まり、最賃の影響率も9〜10%に拡大している。「女性の活躍」といわれながら、ジェンダー差別・子育て・職場のセクハラ問題も何も解決していない。そして今、外国人労働者が最底辺として動員・形成されようとしている。結果、仕事の奪いあいが、人手不足であるのに起きている。同時に排外的気分を高めつつある。


 同一労働同一賃金の中身


 小泉内閣時代は「自己責任」=『弱肉強食』だったが、今は「役に立たない者は抹殺して良い」、あるいはその「存在がみんなに迷惑をかける」=「優生思想」だ。自己責任という「放置」から、「抹殺」「排除」という風潮にまで進んでいるのではないか。相模原市の障害者施設での事件はそれを象徴している。
 「働き方改革」は、個別政策に対する批判も含め、この政権の弱点をこのまま放置していると大きな火種になるのではないかと政権側も認識していることの反映だろう。
 そこで、「働き方改革」・「労働時間の規制」「同一労働同一賃金の実現」「非正規をなくす」という具体化は何かである。
 @労働時間の延長の規制―36協定による労働時間の延長に上限を設ける、Aインターバル規制の導入―始業後から次の始業時までの間24時間を経過するまでには、一定時間以上の継続した休息時間の付与を義務化、B週休制の確保―4週4日の変形週休制の導入、C事業場外のみなし労働時間の明確化、D裁量労働制の要件の厳格化、が挙げられているが具体的にガイドラインで対応が大筋合意となっている。
 「同一労働同一賃金」については「雇用慣行を含む経済基盤との整合性を考慮し、わが国に適した仕組みの構築が重要となる」とし、「職務内容や仕事・役割・貢献度など総合的に勘案し評価する」「日本型同一労働同一賃金」を目指すのが経団連の立場である。
 もう一つのポイントになるのは「企業に待遇差についての説明義務を課す」ということだ。現行では「不合理な労働条件」を労働者が立証するように求められる。正規従業員と非正規従業員との労働条件の相違について、企業が合理的な理由を厳格に立証しなければならない。経団連は、それを拒否している。
 そして、長時間労働の規制については、電通過労死問題に矮小化し、政府と一緒に頬かぶりしようとしている。「過労死促進労基法改悪案」は、次の国会で強行成立させようとしている。

【プロフィール】なかおか・もとあき 全国労働組合連絡協議会事務局長、全国一般全国協議会、労運研・労研フォーラム共同代表

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