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2018.01.30
18経労委報告
労働者の生涯賃金低減を棚上げ


 

 経団連は1月16日、18春闘の経営側の交渉指針にあたる「2018年版経営労働政策特別委員会報告」を発表した。安倍首相が呼びかけた5年連続の官製春闘に「社会的期待を意識し、自社の収益に見合った検討」を付け加えて企業に呼びかけた。政財界が結託して安倍首相の看板政策「2兆円経済政策パッケージ」の下で、春闘決着を狙う。
 労働組合は「生活に根ざした賃金要求」を基本に、職場からの闘いが求められている。


【序文】 日本経済を「新しい成長ステージに入り、デフレ脱却まであと一息」という空文句は16春闘から使い続ける。「複数年にわたりベア実施をしてきた」と述べるが、ベア実施は「自動車、電機」など大企業の一部にすぎず、労働者には行き渡っていない。消費税の増税分が「人づくり革命」に充当されることに嘆き、企業に負担がかからないように注文する。
 「安倍総理による『3%の賃上げ』への言及は、社会的な要請・期待感を代弁したもの」と捉えているが、「3%の賃上げ」を間接表現に抑えている。賃金の大幅引き上げなど、していないのに、「4年間にわたり賃金引き上げの勢いで、経済の好循環を加速してきた。ギアをさらに上げて労使交渉に当たろう」と「企業ファースト」で榊原会長が檄を飛ばす。過去4年間の賃上げは、生活改善に乏しく企業のみが業績を伸ばしただけだ。


【働き方改革の推進と労働生産性のさらなる向上】 企業の成長を働き方改革で加速させる。「多様な・総合的な」文言を羅列して労働者の移動(出向、転籍)の活用を進める。生産性向上と収益拡大を成長の柱に、利益第一主義を「健康経営・多様な人材の促進・介護離職予防」を隠れみのにして、労働生産性の向上を強調する。


【雇用・労働分野における諸課題】 時間外労働の上限規制導入を急いでいる。真の狙いは労基法改定による「36協定」の悪用にある。過労死ラインを越える80時間、100時間の残業を容認する「労働基準法改定案」を生産性向上の第一要因として、早期成立を求める。
 期間雇用者の動向について、「自ら望んで就労している者が8割超を占める」「非正規社員」などの呼称は止めようと勝手に主張する。「非正規雇用から有期雇用は積極的に取り組んでいると結ぶが、総務省の統計で見るならば非正規雇用者が減ることはない。
 「生産性の向上を伴わない地域最低賃金が大幅に引上げられ、地域経済に悪影響を及ぼしている」など、労働者の生活が十分できないにことに目を背け、産別最低賃金(産別最賃)の廃止まで求めている。


【18春闘の経営側スタンス
 1.17春闘で、事実と異なる総括をする。「多くの企業でベア実施」「育児・介護の充実」が活発化したなどと繰り返すが、生活改善ができた成果はなかった。
 2.賃金が増加しても消費が伸びないことは「貯蓄に回している」など勝手な理由づけで、労働者の生涯賃金を削ってきたことを棚上げにしている。
 3.同一労働同一賃金の実現を「職務内容の要素で待遇差の有無をチェックする」として、同一賃金を否定、待遇と手当ての対応で、格差を容認する。
 4.経営側の基本姿勢は、「4年連続で大幅賃上げをしてきた状況下でハードルは高い」ことを強調している。連合の中小企業要求を指摘して、「1万500円は実態から大きく乖離している」と切り捨てる。
 5.収益が高水準を推移している企業でも、賃金引き上げは「年収ベース」を基本にする。月例賃金や総合的な処遇改善の文言を使い、ベースアップを否定している。



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