「組織罰を実現する会」は、2016年4月から署名などの活動を始めた。
同じ苦しみ二度と
「署名のお願い」は、「組織が重大な事故を引き起こした場合、当事者である企業・法人を罰することができる法律をつくるために活動している。私たちと同じ苦しみや無念さを抱き続ける遺族が二度と出ないようにという思いで活動に取り組んでいる」と訴える。
署名行動では一筆も集まらない日もあったという。「組織罰」という言葉が聞き慣れないうえに、意味も分りにくいということがあったのではないかと「実現する会」顧問の安原浩弁護士は述べ、次のように続ける。
個人の処罰が原則
「日本の刑罰は、伝統的に個人の処罰を原則としてきた。確かに、社会に絶えず発生する犯罪や過失事故では、現在でも個人の役割が大きいのは事実。
しかし、過失による事故のうち一度に多数の死傷者が発生するような大事故では、むしろ企業や組織の果たす役割の方が大きくなっているのが現代の特徴ではないか。
JR西の福知山線脱線事故のような巨大事故のみならず、軽井沢バス転落事故や笹子トンネル天井板崩落事故のような巨大とまでは言えない事故でも、その原因が単に運転手あるいは安全管理者個人の注意力不足のみと考えることはできない。
そこには、企業利益の確保のために安全性を軽視する企業風土があったと考えるのが自然だ」。
企業の利益優先・安全軽視では、福知山線事故遺族の藤崎光子さんは福島原発事故刑事裁判の報告集会で、「JR西の大阪支社長は『稼ぐ第一』というポスターを社内あらゆる所に貼っていた。そんな時に事故は起きた」と当時のJR西の“社風”を明らかにする。
そして、「福知山線事故の時、JR東に比べてATS(自動列車停止装置)の設置などは大幅に遅れていた。関空と大阪市内を結ぶ線はドル箱路線だから、きっちりATSはつけていた。未だにJR西は安全面で遅れている」と指摘した。
被害者らの納得を
では、「稼ぐ第一」の社風を「安全第一」に変えるには何が有効か。
安原弁護士は、まず「行政指導」を上げ、迅速性など利点を上げつつ、「行政庁は大企業に甘い」という批判があると指摘。次に民事裁判で「懲罰的賠償」を科すことで安全性を確保させる方法を上げるが、交通事故でも行政処分、民事賠償、刑事処分の3つあるのに、民事賠償だけで済ませることに被害者や社会が納得するか、と問う。
そして、「責任者に適切な処罰を科すことは被害者や社会に一定の納得を生み、加害者にも贖罪意識を持たせる機能があり、事故の防止と社会の安全につながる」と強調、組織罰創設の必要性を説く。
「組織罰を実現する会」は18年10月、大事故を起こした企業に高額な罰金を科す「組織罰」創設を求めて当時の山下貴司法相に面会、約1万人分の署名を提出した。
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