過大なノルマ うつ病の原因 〜困難を乗り越えて〜
埼玉県さいたま新都心局の郵便局員Aさん(当時51歳)が2010年に自殺したのは、業務によるストレスでうつ病を発症したのが原因―3月30日、「埼玉労働局審査官より、2017年労基署が出した労災保険不支給決定を撤回し、認定する」との連絡があった。
Aさんの自殺は当初、@著しい長時間労働ではなかったこと、A発症から時間が相当経過しており立証が不確実であることから、専門家からも労災認定は困難と見られてきた。
それを乗り越えた要因の一つは弁護団の優れた判断であった。安全配慮義務違反訴訟を先行させるとともに、その提訴前にさいたま地方裁判所に証拠保全を請求し大量の証拠を入手した。そこから、さいたま新都心局異動後のAさんの激務が浮かび上がった。
労災認定を勝ち取った二つ目の要因は、繰り返し行った宣伝活動の力であった。これには郵政ユニオン組合員だけではなく、地元新社会党浦和支部の党員も必ず参加をいただいたことなどが励みとなった。そして、ビラを見た同僚たちから重要な証言が続々と寄せられた。
労災認定に舞台を移した以降は労基署、労働局に対する宣伝を重ねた。国の認定基準を形式的になぞる動きに対して「国の認定基準を変えるぞ!」の横断幕を掲げ、紙の弾丸を打ちこむつもりでビラを配布した。
結果、発症前から死亡に至る全過程を評価し、とくに年賀はがき7千から8千枚の販売ノルマを課され、自ら買い取る「自爆営業」を強いられたこと、また、ミスをすると大勢の前で立たされて報告を求められるなどの職場環境もストレスとなり、うつ病を発症し自殺へと追い込まれた。
こうして、発症前の負荷を「弱」から「中」とし労災保険不支給が覆った。
日本郵便の謝罪要求へ
このように労基署の判断を変更することができた根本的な要因は遺族の強い覚悟があった。夫人は困難にひるまず、小学生の子ども3人が母親の背中を支え続けた。 その遺族が納得のいく解決は、日本郵便と当事者の謝罪だ。必ずそれをやりとげ被害者の墓前に報告し本件は終結する。
改めて命は二度と戻らないことを痛感したが、やるべきことをすべてやりきり区切りとする以外にはない。
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