「会社から月収の4割にしかならない休業通知を受けた」と渡辺誠さん(仮名、40歳台)が、労働組合・京浜ユニオン(東京都大田区)に相談に訪れたのは4月末のことであった。渡辺さんは、中堅の派遣会社に機械設計の正社員として入社した。
ところが、会社から斡旋される派遣先はトラック運転手など異業種が多かった。そのため、東京オフィスで研修しながら待機していたが4月24日に、会社から休業通知を受けた。
その内容は、@労働基準法26条の平均賃金の60%を支払う、A休業終了予定日は未定、B休業者には待機期間が年間3ヶ月以上の社員80人が指名された、ということであった。
この労基法26条の平均賃金とは、会社の説明要旨(別記)のとおり、例えば月収20万円の場合は休業手当は8万円と、月収の4割にしかならない。さらに、この月学8万円から健康保険料や厚生年金、税金などが差し引かれると手取りは5万円以下となる。
オンラインでの団体交渉で休業手当の金額の少なさを訴えると会社は、「貯金を使えばいい」と言い放った。従業員の生活を少しも考えていない発言に渡辺さんはじめ交渉員は憤り、「休業手当60%では生きていけない」「長期待機は会社の責任だ」と訴えた。
しかし会社は意に介さず、「90日も待機することはあり得ない、技術が未熟か人間性に問題があるのではないか」など、本人の能力、人格の問題として不誠実な対応に終始した。
交渉を繰り返しても会社の態度は変わらないため、裁判、マスコミ、団体行動権の行使などを告げると、会社は「皆さんの権利は自由にお使いください」と言った。ところが、交渉決裂から4日後の6月8日、会社は強気の態度を一転させ渡辺さんはじめ80人全員の休業時の賃金を、組合要求どおり5月分から全額補償すると伝えてきた。
このように、声を上げることで不誠実な企業の態度を変えることができる。また、国民一律10万円給付や休業手当を補助する雇用調整助成金の日額上限の2倍近くの引上げなども、多くの抗議の声で実現している。
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