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2013.8.20
教科書選定
介入強まる 




 「一部の自治体で公務員への君が代強制の動きがある」などと記述した実教出版の新教育課程版『高校日本史A・B』教科書について、東京都教育委員会が6月27日、大阪府教委が7月9日、各公立高校等での来年度用の選定を「不適切」とする校長宛通知を出したのに続き、神奈川県教委も7月24日、実教出版を選んだ28校の校長に再考を求めた。その結果、実教出版は7月31日までに全県立高で差し替えられたことが8月6日、具志堅幸司・県教育委員長への記者団の取材で明らかになった。


 神奈川県では7月23日の臨時教育委員会終了後、非公式の場で複数の教育委員が「記述は県教委の方針と相容れない」と発言。藤井良一教育長らは実教出版を選定した28校に再考を求めることを決定した。理由を県教委事務局は「このままでは8月20日の教育委員会定例会で不採択になり手続きの遅れが出る」と説明するが、本音は「現場選定の教科書を公式の場で、戦後初めて不採択にする事態を回避する保身」だ。
 県教委事務局は、翌7月24日午前、元五輪メダリストの具志堅氏や元NHKキャスターの宮崎緑氏ら全教育委員の了解を得た上、同日午後、28校の校長に「再考」を求めた。高校教諭らによるとこの際、志摩尚平参事監が「実教出版の採択校名が公になると混乱が起こる可能性もある」、久保田啓一・高校指導課長が「実教出版を採択すれば右翼の街宣車が学校に押しかけて来る恐れがある」と述べた旨、数校の校長が明言したという。
 旧「こころの自由裁判」メンバーが開いた集会や記者会見では、・夏季休業中(の休暇や出張)で地歴科教諭が1人しか出勤していないのに校長が変更させた、・地歴科の教員免許を持たない校長が「県教委の言うことには従わざるを得ない。私の権限で変更する」と宣告し、副校長が変更届けを提出したため、地歴科教諭がどの教科書になったか知らないなど、生徒の実態把握不在、政治主導で変更した報告が相次いだ。
 この件では木下靖氏(県教委高校教育指導課副課長) は 「地歴科教諭が全員はいないからといって、変更を決められないわけではない」と発言し、更なる抗議の声が出ている。
 一方、大阪市教委は7月30日の会議で2名の教育委員が実教出版を暗に非難したのを受け、8月6日の会議では各高校の希望通り採択したものの、「2015年度以降使用の教科書については、各校は推薦順位や優劣は示さず2つ以上の教科書の長所と短所を記し提出。市教委が自ら調査研究し採択するものとする」と付帯決議し、「採択権が教委にあるとは明記していない地方教育行政法」の歪曲化を正当化してしまった。

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