(つづき)
私はこれまでに約3000校を訪問したが、学校はどんなに手間暇をかけてもトップダウンでは変わらない、内側からしか変わらないということを教えられた。最初に訪問した1000校はことごとくが失敗した。
ある中学校で大改革を行った。自由な自己学習をとり入れ、評価をなくした。が、350人のうち50人いた不登校が逆に80人に増えた。これでは何のための改革かわからない。
失敗の原因は教師、校長、行政、保護者が頑固で、教師や校長の力で変えようとしたことにあった。そこに無理があった。子どもを変えるのは子どものみ、子ども同士が支え合って変える。私自身、子どもの力は凄いと気づくのに何年もかかった。
学ぶ権利は子どもの人権の中心、学びは子どもの希望の中心だ。学校の窓ガラスが年間900枚割られ、トイレが使えなくなった学校がある。300人が入学して、200人がやめた高校もある。
なぜそういうことが起こるのか。学ぶ希望を見出せないからだ。学びから逃避した子どもは簡単に崩れる。子どもたちが学ぶ希望を見出した時、学校は変わる。教師、学校のミッション(使命)は子どもの学びの権利を実現すること、質の高い学びを保障することにある。憲法26条「教育を受ける権利」は13条「幸福追求権」、25条「生存権」とともに成立した。その意味を考えてほしい。
生徒数二百数十人の大阪のある困難校は9割が要生活保護、3割が外国人、まるでサファリパークだった。学力が低く100点満点中平均二十何点だった。それが一気に伸びた。各教科で平均50点以上アップした。
信じられない話だが、その秘密はどの子も一人にしない、排除しないことにあった。つぶれる子は一人になり、排除された子は授業を妨害する。中国人と日本人の子が手ぶりで教え合い、言葉の壁はない。ダウン症の子もいる。子どもってとても優しい。支え合う、お節介する、そして学び合う。
(つづく)
|