小学校で2020年度、中学は21年度、高校は22年度から年次進行で実施する学習指導要領改定を審議する、中央教育審議会の部会等の会議で、文科省の愛国心°ウ育を諌める発言が相次いでいる。
5月26日、教育課程部会の社会科等で「育成すべき資質・能力」などを審議するワーキンググループ(WG)の会合で、文科省教育課程課は「涵養される自覚や愛情」なる語句に愛国心≠紛れ込ませた案を提示。頼住光子東京大学教授は「『愛情』という語は分かりにくい。郷土愛がよい」と述べた。
傍聴者らが閉会後、頼住教授に発言の真意を問うと「文科省は愛国心を意図している」と説明。案の定、同省が当日出した取りまとめ案は「自国を愛しその……繁栄を図る」「我が国の歴史に対する愛情」「日本国民としての自覚」など、ナショナリズム満載だった。また同省は、高校の新科目「公共」の構成内容に「国家・社会に参画し」と明記。これにも3人の委員が、次のように反論した。
岡崎竜子・金融広報中央委員会金融教育プラザリーダー「公務員なら国家に参画≠ニ言ってよいが、生徒に参画≠ワで求めるのはいかがなものか」
村松剛弁護士「まず社会と関わり、その延長線上に国家がある。対国家というメッセージが強くなるので、どうしてもと言うなら社会・国家≠フ順にすべき」
池野範男広島大学教授「社会≠ヘいいが、生徒を国家≠ノ参画させるのは一種の動員だ」
5月18日の高校地歴・公民科関係の会合(主査・田中愛治早稲田大学教授)の探究科目の審議でも、文科省は日本史・世界史とも、同一表現の愛国心∴逅ャ案を提示。これに対し愛知県立岡崎高校の磯谷正行教頭は、「日本を愛するために世界史を教えているわけではない。世界史の一番目の目標は、『日本国民としての自覚』ではなく世界市民を育てること」と発言。田中主査も「日本史も、日本から見た世界を常に意識すべきだ」と述べた。
だが両日とも、居並ぶ文部官僚はコメントしなかった。(教育ライター・永野厚男)
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