根津さんらの07年の君が代不起立処分無効の高裁判決を不服として上告した東京都教育委員会に対して最高裁は5月31日、上告棄却とした。ここに根津公子さん6カ月、河原井純子さん3カ月の停職処分取り消し、都にそれぞれ10万円の損害賠償を命じた高裁判決(須藤典明裁判長)が確定した。
この裁判勝利報告集会が6月19日、東京都内で開かれ、約60人が参加した。
根津さんは「不起立で、いつクビになるかといつも思っていた。それを判決はよくくみ取ってくれた。それだけでなく、これからの加重処分に歯止めがかけられるかもしれない。それが一番うれしい。免職処分が迫っていたとき、仲間からもやりすぎと非難されたが、生徒たちの励ましで救われた。弾圧が強くなる時代、闘いきるしかない」と発言した。
河原井さんは「この日を迎えられたのは『雑木林の共闘』が結実したから。最高裁の分断判決をのりこえようと仲間づくりをしてきた。勝利判決は出たが、10・23通達の違憲・違法、戒告を含むすべての処分の白紙撤回を勝ち取るまで本当の勝訴はない」と語った。
そして集会には、根津さんの教え子も駆けつけ、「先生の不起立を貫く姿勢から私も自分の意志を貫くことを学んだ」と語った。
集会では、岩井信弁護士が判決の意味について語った(別項)後、裁判に関わってきた和久田修弁護士、萱野一樹弁護士も裁判勝利の喜びを語った。
今回の画期的な勝利判決は07年事件のもの。根津・河原井裁判は、現在08年事件が地裁で進行中、09年事件も残っている。まだまだ闘いは続く。
判決の意味 岩井 信弁護士
2012年1月最高裁第一小法廷判決は河原井さんの国賠請求について原判決破棄・差戻し、根津さんについては停職処分を維持し棄却した。文字通り分断判決だった。これは河原井さんについては減給以上の処分を出す時には慎重な考慮が必要という規範を出すが、根津さんについては停職処分を取り消さないで裁判所的にはバランスをとり東京都、全国の教育委員会に一定のメッセージを発した。秩序を乱した人には停職もありだというメッセージが残った。このことはその後の闘いが難しくなるということだった。
それが今回、15年5月の東京高裁須藤判決を受けての東京都の上告棄却で分断でなくともに取り消すことができた、さらに10万円ではあるが国賠訴訟を認めさせることができて一定の評価をしてもいいと思う。
須藤裁判長は国労バッチ着用裁判でも「力で従わせようという労務政策に基づくもの」と判断している。さらに04年7月には再発防止研修命令の執行停止を求めた裁判で、申し立ては却下したが、「合理的に許容されている範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生じる可能性がある」と断じている。
最高裁も、須藤判決にようやくたどりついたがまだまだ難しい問題もある。
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