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2016.11.22
奨学金制度の現状と課題「下」
貧困物者に迫る自衛隊の勧誘

  

 菊地 憲之(新社会党兵庫県本部書記長)


 返済滞納の背景は何か


 
 T 労働者の大幅な年収減


 1995年の日経連『新時代の日本的経営』の終身雇用制度から有期雇用制度への転換による非正規雇用の拡大(全体約4割)に伴い、労働者の年収も97年をピークに減少が続いている。民間平均賃金は、1997年は467・3万円→2013年413・6万円で減少額53・7万円。【図1】参照。

 U 国立大学・私立大学の入学料・授業料(初年度納付金)の高騰。

 【表1】を参照。

 表1■国立・私立大学授業料等の推移
 1969 年入学/2015 年現在65歳の場合
 国立大学1万6000 円(入学料4000 円/授業料1万2000 円 )
 私立大学22万1874 円(入学料13万7826 円/授業料8万404 8 円)
 1989 年入学/2015 年現在45歳の場合
 国立大学52万5000 円(入学料18万5400 円/授業料33万96 00 円)
 私立大学103 万5116 円(入学料25万6600 円/授業料57万 5844 円/施設・設備費20万7932 円)
 2010 年入学/15年現在25歳の場合
 国立大学81万7800 円(入学料28万2000 円/授業料53万58 00 円)
 ※学費の急上昇時、特に国立大学の学費が上昇、私立大学との格差は縮 まる。



 V 高卒・大卒の就職難の拡大


 新規高卒者に対する求人数は1992年3月末の167万6000件が求人数のピークで、2003年3月末に19万8000件で最大の落ち込み(87%ダウン)になった。2010年3月末は19万8000件で再び最低水準に。
 大卒の就職率はバブル崩壊後の失業率のアップと若年就業の困難が続き、失業・無職の増加、非正規雇用の増加、不安定雇用で生活できない大卒者の現実がある。 80年?04年生まれをミレニアム世代と呼び、韓国では恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢、就職の7つを諦める。非自立(親の脛かじり/パラサイトシングル)、人生の選択肢は狭い。


 若者の貧困と軍隊の求人


 T アメリカの経済的徴兵制
 @徴兵制をやめる欧州の動向
 現在、世界で60カ国が徴兵制を採用している。しかし、欧州では冷戦終結後にフランス、ドイツなど8カ国が徴兵制から志願制に切り替えた。高度な兵器や情報システムに習熟した機動的な軍隊には、徴兵制ではなくプロが必要のためだ。
 A米軍兵士の志願理由上位は「奨学金」「医療保険」
 1973年にプロの軍隊を必要としたベトナム戦争の反省から、選抜徴兵制を完全志願制に切り替えた。
 03年に連邦議会に提出された白人も黒人も等しく徴兵制を復活する法案は否決された。
 U 不足する自衛隊員への対応策
 @少子化で隊員確保に危機感 急速に進む少子化により、自衛官募集は厳しくなるというのが10年前からの防衛省の認識だ。
 高卒18歳の人口は1991年は106万人、12年は62・4万人に減少している。
 A自衛隊員の「街頭募集」から「組織募集」への転換 1960年代の強引な街頭での勧誘に社会的な批判と隊員の質の低下があり、組織募集として自治体、学校、企業などとの連携強化策に転換した。
 「任期制」隊員の志願者2013年度は3万3538人、2014年度は3万1361人と減っている。
 V 組織募集の取組み
 @学校への対応 07年から「ハイスクールリクルーター」制度を開始した。若い自衛隊員が母校で自衛隊の説明を行う制度で、1万3500人の参加で入隊1858人という成果を生んでいる。
 自衛隊説明会の実施についての13年11月の防衛省会議資料では、安全保障教育の必修化検討、退職自衛官の学校への再就職を検討している。  A自治体への対応 自衛隊員募集に自治体の過剰なサービスが問題になっている。防衛省が住民基本台帳の適齢者(高卒) の氏名、生年月日、性別、住所の情報を全国の1742市区町村のうち、約71%に当たる1229市区町村が積極的に提供している。
 B企業への対応 防衛省が経済同友会に13年7月に「新入社員の自衛隊インターシップ制度」を提案、
 企業の新入社員が自衛隊に派遣され、「実習生」として2年間働く。その後、自衛隊員の再就職を企業が支援する(受け入れる)。
 W 日本でも貧困に忍び寄る経済的徴兵制
 @志願理由は国防意識・愛国心より経済的利点による 経済状態(景気)と自衛隊への志願数は反比例の関係にある。
 A自衛官の出身分布と貧富との相関関係は高校新卒「2士」(任期制)の入隊率と出身地分布を県単位で見る貧困率、1人当たり県民所得との関係は見逃せない。
 B大卒でも安定した正規雇用につけない現実、大学より自衛隊がキャリアアップにつながることを、自衛隊も経済的メリットとしてアピールして勧誘している。
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