2018.09.04
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福島県の12市町村 児童・生徒戻れず |
『遠隔授業』を導入へ |
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復興庁は本年度、福島第一原発事故で避難命令を出した12市町村で、テレビ電話やインターネットを通じた「遠隔授業モデル」を展開することにした。
「遠隔授業」は本来、文科省が大学で実施を促し、高校を対象に過疎地などの生徒数も教員も少ない地域で導入したもの。復興庁が福島の12市町村で、しかも小中の義務教育で実施するのは、避難解除を急ぎ学校も再開させたものの、生徒が戻ってこないからだ。
対象地域では事故前の2010年5月には6710人の児童生徒が在籍していたのに、今年4月時点では、わずか785人しかいない。しかも、福島県内に避難したままで長時間かけてバスで通学する子どもも少なくないという。
浪江町には住民票上は1万8000人の町民がいるが、帰還して町内に居住しているのは800人足らず。政府は、とにかく住民を「帰還」させようと、避難先の住宅補助や慰謝料を次第に打ち切ってきた。
浪江町は、6月27日に急逝した馬場有(たもつ)町長を先頭に全町民の7割が参加してADR(原子力損害賠償紛争解決センター)に慰謝料増額を申し立てたが、東電はADRの和解案を拒否、避難者への非人間的な兵糧攻めまでしている。
しかし、とくに子どものいる家族は低線量被曝への不安から「帰還」できない。浪江町の小中学校の児童生徒は事故前に1773人だったのが、今はわずか17人。 原発事故被害者の子どもたちは避難先で差別にあい、地元の学校に戻れても大勢の友達とは触れ合えず、高線量の放射能が残る野山では遊ぶのもままならない。それだけに教職員を多く配置し、寄り添う必要がある。
ところが、復興庁は、教職員の代わりにテレビ電話やネットで「遠隔授業」をするというのだ。しかも、12市町村の取組みを「先進例」として全国にも広げたいらしい。文科省は来年度からAI先端技術を教育に活かす実証実験に乗り出す。12市町村での「遠隔授業」もその実験台の一つだとしたら大問題だ。 |
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