|
『エリート』育成の小中一貫校 |
パブコメ募集は形だけ? |
根津公子の都教委傍聴起 |
「日の丸・君が代」強制に反対して闘っている元教員の根津公子さんは、東京都教育委員会の傍聴を続けている。3月28日に開かれた都教委は定数6名で山口香委員と宮崎緑委員の2名が欠席という中で、東京都教育ビジョンなどが審議された。主な論議を紹介する形で、根津さんの傍聴記を紹介する。
第4次教育ビジョン
「ビジョン」は1月31日の定例会で骨子を報告し、その日から30日間にわたり受け付けたパブコメ(パブリックコメント)を踏まえて、有識者や校長等による検討委員会で協議し、策定したとのこと。それが今日の定例会で承認された。
「すべての児童・生徒に確かな学力を育む教育」「社会の持続的な発展を牽引する力を伸ばす教育」など12の方針と30の「今後5カ年の施策展開の方向性」を挙げる。
しかし、資料として配られた、パブコメに対する「都教委の考え方」を見ると、パブコメを「ビジョン」に取り入れた形跡はなかった。やはり、パブリックコメントの募集は形だけであったのか。たくさんあるが、そのうちの一つを挙げよう。
「2 社会の持続的な発展を牽引する力を伸ばす教育」の「C科学的に探究する力を伸ばす理数教育を推進します」に対して寄せられたパブコメは、「理数系ばかりでなく、人文・社会系、芸術系、スポーツ系など、子供たちの興味・関心に応じたきめ細かな教育が進められるよう、人員の配置等、教育環境の整備を行うことが重要である」と。
このパブコメに対し都教委は「都教委の考え方」として、「社会の持続的発展を牽引する力を伸ばす教育について『基本的な方針2』に位置付け、理数教育、農業や工業、商業などの職業教育、高度に情報化した社会で活躍できる力を伸ばす教育などを推進していくことで、これからの東京・日本の発展を支え、様々な産業を牽引できる人材を育成していきます。」と書く。これでは都教委の一方的な考えを言うだけで、パブコメへの回答にも協議の材料にもなっていない。
このパブコメは、兵力不足となった1943年、「在学徴集延期臨時特例」を公布し、理系と教員養成系を除く文系の高等教育諸学校の学生の徴兵延期措置を撤廃し、戦場に向かわせた歴史的事実。そしてまた、文科省が2015年6月、国立大に対し、「社会が必要としている人材の育成や地域への貢献を進めてほしい」として、文系学部・教員養成系学部について見直すよう通知したことへの懸念から出されたのではないかと思う。
2月に策定された「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」も、パブコメが最も多く寄せられた「立川高校夜間定時制の閉課程(閉校)をやめて」を検討した形跡がないまま、閉課程の方針を打ち出したものだった。機能させようとしない都教委のパブコメ制度について、発言する教育委員はいないのか。
一貫校の入学決定者
経過(略)
今日の報告は、入学者の決定方法についてであった。
小学校入学者決定の流れは、第1次は抽選→第2次は適性検査→第2次合格者が募集人員を上回った場合には第3次で抽選。適性検査は、「都立小中高一貫教育校の『生徒の将来の姿』と照らして設定した能力等を把握することができる内容」とする。また、評価は、「評価項目(例‥コミュニケーション能力等)ごとに適性の有無等を総合的に判定」するという。適性検査という名の受検をするということだ。
附属小学校から中等教育学校(中高)への内部進学については、「附属小学校は、内部進学に当たって児童にとってより良い選択ができるよう、保護者と丁寧に面談を重ねながら共通理解を図る」「附属小学校は、児童の学習の習熟度について確認し、十分な支援を行う」とし、他の小学校からの進学については、「内部進学者に欠員が生じている場合」とする。
17年4月27日の定例会では、「附属小学校から中等教育学校への進学については、本人の日常の成績等を基に、学校が進学者を決定する」としていたことと考え合わせれば、成績の良くない児童は切り捨てるということだろう。
この学校が「エリート」育成を目的としたものであることは明らかなのに、北村友人教育委員は「エリート育成にならないように」(趣旨)と発言。その発言に対し、都教委報告者は「附属小学校は区市町村教委に対しての、モデル校として設置した」と応答。どの子にも平等に教育費を使うのではなく、ごく一部の「エリート」育成にカネをつぎ込むというのに、平然とこのような発言劇をする。腹立たしい限り。
文科省の保・幼・小連携
この件は18 年3月22日及び10月11日の定例会で、荒川区の幼稚園と小学校(同じ敷地にある)をモデル校(5歳児から小学校2年生)とし、21年度からこの子どもたちに同じ教室で年間を通して授業を行い、「円滑な接続が図れたか」を検証する、と報告されていた。今日は、実践のための年間指導計画の具体例(「年下の友達と一緒に絵本を見たり、読んであげたりする」など)が提示された。
18年3月22日の定例会では、教育委員から「モデル校に入るために、受験教育が3歳前になる不安がある」との発言もあったが、今回は「素晴らしい、細かく具体的で」と絶賛した。
文科省が、保・幼・小連携の方針を打ち出したのは、幼稚園教育要綱及び保育所指導指針に、3歳児以上の幼児に「国旗・国歌に親しむ」ことを入れたことが示すように、幼稚園・保育園にも文科省が介入したいと考えるからではないのかと思う。何を目的としているのかを、教育委員は公開の定例会の場で質してほしい。
|
|
 |
|