トップ週刊新社会教育2019.09.24
子どもをテストで追い詰めるな
維新政治による大阪の公教育破壊 《上》
市民の会  志水 博子

 大阪には全国で“唯一”と呼ばれる政策がいくつかある。中学生統一テスト「チャレンジテスト」制度もその一つだ。統一テストを実施している地方自治体は他にもあろうが、「チャレンジテスト」は高校受験の調査書(内申)にそのまま反映する。そのような手法を採っているのは大阪府だけである。

 2015年度から始まったこの制度により、中1・2年生は、その点数で(1年は3教科、2年は5教科)、教員が評価した5段階の評定の「修正」を余儀なくされる。教員の評価は適正ではないと修正された生徒は年間延べ2万人にも及ぶ。3年は、“団体戦”と称されるように、その学校の得点と大阪府全体の得点を比較し、各学校ごとの「評定平均の範囲」が決められる。例えばA中学は2・0から2・6、B中学は3・8から4・4に全生徒9教科の評定平均を収めなければならなくなる。すると、A中学ではほとんど「5」はつかず、逆にB中学では「5」のバブル状態が起こる。何とも奇妙な制度が、当時の大阪市教育委員長の大森不二雄氏(現大阪市特別顧問)は、内申書革命と呼んだ。

 しかし、実施4年が経ち、府議会をはじめ市町村議会でも批判が起こり、昨年12月枚方市議会は大阪府にチャレンジテストの廃止を求める意見書を出したほどだ。大阪市立中学校長会は、チャレンジテストの公正性についてアンケートを実施したが、そこには悲鳴とも言える現場の声が噴出していた。

 9月2日、さすがにこのままではと考えた大阪府教育庁は「中学生チャレンジテストの見直し等について」を公表する。しかし、その内容はますます公教育の破壊を示すものであった。1・2年の「個人戦」こそ廃止するようだが、代わりに1年から「団体戦」方式を実施するという。おまけに全国学力テストに合わせて小学5年の統一テスト実施も新たに行うという。これでは改悪である。

 次回は、変更で明確になった維新政治の教育「改革」の狙いをお知らせする。