トップ週刊新社会教育2019.12.03
東京教組が教研集会
『同調』社会に警鐘 〜映画監督の森氏が講演〜
 小中の教職員で作る 東京都公立学校教職員 組合が 10 月 26 日、都内 で教育研究集会を開いた。
 
 始めに、東京教組役員が次のように基調報告をした。

 @「特別の教科」道徳は、多様な意見を安心して発信でき、異なる価値観を認め合い、 多面的・多角的に考えられるよう、「中断読み」の授業も提案。平和・人権等の価値を大切にできる実践創りをしよう。

 A学習指導要領は一言一句守らなければならないのではなく、大綱的なもの。汎用性ある学びや、学ぶことの意味・喜びを感じられる授業作りの実践を続ける。

 B今年は子どもの権利条約批准25年目。子どもの権利委員会報告書審査の総括所見で1月、日本には子どもの意見表明権の保障等を促す勧告が出た。校則や授業規律の検証をしよう。

 この後、映画監督の森達也明治大学特任教授が「同調圧力に抗するために」と題し講演した。
 
 森さんはまず、日本人は「右向け右」等の指示をほしがり、指示があったかのように忖度して行動したり、在日外国人等マイノリティを憎悪し排除したりする、群れたがる傾向や同調圧力があると指摘した。

 また、2001年9月の同時多発テロに対し、同年10 月に愛国者法(政府の権限を大幅に拡大させ、市民の人権を制限)を発効させた米国で、当時のブッシュ大統領が「敵か味方か、正義か悪か」しか言わず支持率を上げ、「悪をやっつける」とアフガン攻撃した事実を振り返った。

 さらに、大量破壊兵器が実はなかったイラク攻撃で、「9・ 11 を3桁は上回る市民が死去した」と指摘。戦争の愚かさと全体主義の恐怖を語った。森さんは続けて「皆 で一緒にやる『集団』には副作用もある」とし、「『僕、私』など一人称単数の主語を失い、『我が国、我が軍』等、帰属する共同体を表す主語になってしまうと、述語も変わり暴走してしまう」と述べた。

 そして「組織や国家に主語を委ねると、個人が全体の一部となり、虐殺や戦争をやっても、個々人は集団に埋没し思考停止。過ちに気付かなくなる。こういう歴史を繰り返すな」と、警鐘を鳴らした。