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ひろがるコロナ感染症 |
困窮する介護職場と学生生活 |
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冷遇され続けた訪問介護制度 ホームヘルパーの支援を急げ
介護現場でも新型コロナウイルスの感染者が増加している。介護保険制度がスタートして20年目に入っている。国は、介護は「施設中心から在宅福祉へ」との看板を掲げ、「ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ」を在宅福祉の三本柱に据えた。
しかし、介護給付費の抑制が連綿と続き、中でもホームヘルプは受難の20年間であった。デイホームでの新型コロナ感染者が発生した地域においては、ホームヘルプ事業にしわ寄せがいき、危機に瀕している。
スタート時点から問題があった!
介護保険が始まる前は、ホームヘルパー(以下、ヘルパー)は事業所に出退勤していた。それが、自宅からの直行直帰の「登録ヘルパー」が導入された。介護報酬は、利用者へのサービス提供時間しかカウントされない。移動時間、待ち時間、書類作成時間などは保障されない。
そのため、労働基準法違反事例が多い。しかも、非正規ヘルパーが多く、女性が9割で、年齢構成も60歳代以上が3分の1を占める。他のサービスと比較しても、最初から低賃金構造が組み込まれていた。
ヘルパー利用の制限強化の連続!
ホームヘルプ事業は、生活援助(以前は、家事援助)と身体介護の2種類に分類される。
生活援助は、掃除、洗濯、調理、買い物などである。身体介護は、排泄・食事介助、清拭・入浴などである。家事援助は1回1時間が基本であった。それが、2012年度から基本45分に改悪された。15年度からは要支援1、2のホームヘルプとデイサービスは、介護給付から外し、自治体の地域支援事業に移行した(3年間かけて)。
さらに政府は、21年度から、要介護1、2の生活援助も「軽度者」と見なし、地域支援事業に移行しようとしたが、さすがに反対意見が多く先送りされた。他にも、生活援助の同居家族がいる場合の利用抑制、利用回数の多い人の利用制限など、ヘルパーにとっても利用者にとっても不利益な事態が続いている。
政府は、ホームヘルプ、とりわけ生活援助を目の敵にしてきたが、新型コロナの発生で今や仇となっている。
NPO法人代表など要望書提出!
4月10日、訪問系サービスの事業所を運営するNPO法人の代表者などが、政府と国会に「訪問系サービスにおける新型コロナウイルス対策の要望書」を出した。@訪問系サービス事業所へのきめ細かい感染予防、感染対策の周知徹底を、A訪問系サービス事業所と介護労働者が新型コロナウイルス蔓延時に安心して働き、休める環境整備を、Bホームヘルパーの緊急増員を、の3点である。
多くのヘルパーは、感染に怯えながら働いている。低賃金の上、労働環境も厳しい。自治体は、国の対策指示を待つのではなく、自治体独自でも先行したヘルパー支援が求められる。
危機に瀕する大学生等の生活奨学金返済の猶予・免除も!
「収入減で退学検討」が5人に1人!
4月27日、学生団体「高等教育無償化プロジェクト(FREE)」が調査した結果を発表した。それによると、大学・専門学校生の5人に1人が「新型コロナの影響による親の収入減、アルバイトの減収」などで、20%近くが退学を検討しているとの報告が出ている。
大学では、東北大は学生に総額4億円規模の緊急経済支援、明治学院大学は学生全員に一律5万円支給などが報道されている。多くの大学でも授業料の延納・分納などの検討がされている。それ自体は、歓迎すべきことである。しかし、問題は授業料が高いこと、学生の半数が奨学金(事実上は大半が教育ローン)を利用していることである。
政府は、今年4月から給付型奨学金の拡大や授業料減免制度の拡充を始めることになっている。しかし、所得制限の額は低く、しかも前年収入で査定され、多くの人は対象にならない。
政府は、減収になった人も対象にすると言っているが、額面どおりに受け取るわけにはいかない。本来、学費は西欧のように無償にすべきであるが、少なくとも今回の事態で困っている学生には弾力的かつ迅速な支援をすべきである。現役学生が大学生活を安心して送り、将来に希望を持てるようにすることは、国の責任である。
奨学金返済者への支援も!
大内裕和中京大学教授が共同代表を務める「奨学金問題対策全国会議」は4月16日、文科省と日本学生支援機構に「新型コロナウイルス感染症の影響に鑑み奨学金と学費についての緊急要請」を行った。2018年3月末で、奨学金の返済者は約400万人で、その内延滞者は約16万人。
大内教授らは、「貸与型奨学金の全ての借主・連帯保証人・保証人に対し、今後1年以上の期間、一律に返還期限を猶予すること。それができない場合には、返還期限猶予制度の利用基準を大幅に緩和し、必要な人がもれなく返還期限の猶予が受けられるようにすること」を強く求めている。
就職氷河期などで正規労働者になれなかった奨学金返済に困っている人を支援することも、国の責任である。
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