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2012.2.21
消費者からみたPTT(上)
軍事的側面も
大野和興さん講演@

 
 講演する大野和興さん
 日本のTPP交渉参加を巡る日米両政府の事前協議が始まり、日本のTPPへの参加に向けて本格的な動きが始まった。マスコミがこれまで、TPP参加を巡って自由化反対の農業団体と賛成の経済団体との争いと問題を矮小化して報道してきたため、TPP参加の危険な本質が明らかになりにくいという状況がある。このため日本消費者連盟などでは、連続講座「消費者からみたTPP」を始めた。1月25日に東京都内で行われた第1回講座から農業ジャーナリストの大野和興さんの講演「TPPは何をもたらすか?」の大要を掲載する。


 世界は、ヨーロッパがこけてマーケットがグラグラになるとともに中国がおかしくなり、連鎖的危機が世界中に広がっている。TPPも中国を軸に解くことが大事。
 野田佳彦首相は、昨年11月にハワイで開かれたAPEC首脳会議でTPP交渉への日本の参加を表明した。首脳会議に対して私たちアジア・太平洋地域のNGOは、対抗会議とデモをやった。


 軍事と経済結ぶ環


 ハワイという島からTPPを見れば、色んなことが見えてくる。
 その1つは、TPPが持つ軍事的側面だ。APEC首脳会議後、オバマ米大統領はオーストラリアに行って豪の北にあるダーウィンに海兵隊を常駐させると発表した。その足でバリ島に飛び、「アフガン、イラクは終わった。これからはアジアだ」と宣言した。
 韓国の済州島には米の海軍基地が建設されようとしており、沖縄の辺野古新基地建設、与那国島へ自衛隊配備、グアムへの海兵隊移転、ハワイのアジア・太平洋軍司令部、ダーウィンと中国を包囲する三重の防御体制がとられようとしている。これに連動する形で野田内閣は昨年末、武器輸出三原則を全面緩和した。
 オバマは、ハワイでこの1年でTPPの具体的成果を上げるという合意を取り付けてダーウィンに飛んだが、このことから、TPPが軍事と経済を結ぶ環≠ナあるととらえるべきだと感じた。
 対中国で防衛網を敷くことの意味するところは、アジアにおける軍拡競争だ。世界の軍事費をみると11年度で1位の米が60兆円、2位の中国が7兆円、3位の日本は5兆円。1位と3位が合体する。そして、7兆円の中国を包囲する、そういうものとしてTPPを考える。アメリカが基地を置いているところとTPP参加国は大体重なる。
 TPPは米中によるアジア市場の争奪戦であって、ブロック経済化という要素がある。そこに軍事的な意味が加わり、日本の武器輸出三原則の緩和という形で出てきた。


 非関税障壁が本筋

 
 「非関税障壁」が、TPPの本筋だ。農業で最大の障壁は、耕す者だけが農地を保有できる農地法。日本と海外の資本は農地に手をつけられず、農地法は国際的な障壁になっている。北海道などで中国人が山林を買っていることがニュースになっているが、山林は誰でも買える。農地を山林と同じようにしたい、ということだ。
 漁業では、海や浜を利用する権利である漁業権が障壁。宮城県知事は、3・11津波で大きな被害を受けた漁港の集約化を進めている。漁業権を企業に売り渡せという形で特区をつくり、うまくいけば、全国化する。
 労働の分野での非関税障壁は、労働基本権だ。労働者が闘いによって勝ち取ってきた時間労働や解雇などに対する規制くらい企業にとって邪魔なものはない。
 そのことは、日韓FTA交渉を見ればよく分かる。韓国の労働者は、法律を越える権利などは労働協約でとってきた。日本は韓国に対して、協約を認めない法律を作らなければ日本の企業は投資しないと要求した。
 また、労働者派遣法の改正が棚ざらしになっているが、派遣法は労働法のらち外にある労働者群を制度で作っておくというもので、まさに労働問題におけるTPPだ。

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