人気お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたとの自民党片山議員による個人攻撃が、あたかも「のろし」であったかのように、受給者や生活保護制度そのものへのバッシングが高まっている。受給者210万人、国費3・7兆円投入という現状がさらに更新しそうな勢いのなかでの、一大キャンペーンだ。
「適正化」と称して生活保護を圧縮しようとする試みは、過去、占領軍の対日政策転換期や、石炭産業合理化にともなう失業者増の時期に行われてきた。
長期不況に入ってからも、4分の1を負担することで財政が圧迫される自治体レベルでは、窓口で申請を抑制する「水際作戦」が行われてきた。
しかし、「派遣村」をはじめとする運動が押し返し、現役稼働層の受給を広げさせてきた。これを「タガがはずれた」(自民党世耕議員)として問題視しようというのだ。
これは新たな「適正化」攻撃であると同時に、政権交代の積極面であった子ども手当をつぶし、いま消費税増税に合わせて最低保障年金を葬り去ろうとする動きと同じく、新自由主義復権の一環だ。
90年代以降の非正規雇用拡大や、核家族化・高齢化により、雇用や家族による社会保障機能が弱まったことで、現役世代の困窮が増大した。保守主義は家族の扶養義務を強調することで、新自由主義は自己責任論によって、貧困問題を再度私的領域に押し戻す。
厚生労働省は特別部会を設け、生活保護法改定も視野に入れた、「生活支援戦略」策定作業を始めている。6月中に中間まとめが国家戦略会議に提示される予定だ。
内容は、給付適正化のほか、ハローワークとの連携強化、保護を受けている間の就労収入の一部積み立て制度等だ。ワークフェア(就労を通じた福祉)色が濃く、新自由主義の文脈では就労支援という名の強制になりかねないものだ。(義)
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