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2014.7.08
暴走するアベノミクス(下)


格差と貧困の拡大 止まらない人口急減
野崎佳伸


 増田寛也元総務相が座長を務める日本創成会議が5月に公表した2040年の人口推計と「消滅可能性都市リスト」の衝撃は、今も続く。
 増田氏は「若者が結婚し、子どもを産み育てやすい環境づくりのため、全ての政策を集中する。企業の協力は重要な要素」と提言。「非正規雇用の男性は正規雇用に比べ20〜30代の未婚率が2倍以上高い」として「雇用・生活の安定」や「働き方改革」などを訴えた。掲げられた対策案にはアブナイものも含まれるが、人口減少問題をリアルに再提起したことは評価できる。
 次いで同月、経済財政諮問会議専門調査会「選択する未来」委員会が中間整理としての「未来への選択」を提出。これには増田氏も関わっているから創成会議の提言はかなりの部分が盛り込まれたものの、「経済成長と発展」とか「安全・安心の基盤確保」など、的外れな記述も多い。だが、「雇用が不安定な非正規社員の処遇見直し」の文言は残され、「日本の子育て支援関係社会支出はOECD平均以下」との注釈もあった。


 これらの提言は新成長戦略などにどう生かされたか。具体的なものは実に希薄だ。何よりも、少子化を招いた反省と、婚姻率と出生率の向上を阻んでいる要因の分析は何もない。「非正規」の文言も消し去られた。具体性があるのは「50年後!にも1億人程度の安定的な人口構造を保持する」「第三子以降の出産・育児・教育への重点的な支援」「新たな少子化対策の大綱を平成26年度中に策定する」という部分だけだ。
 甘利大臣は一連の記者会見での質疑応答で、「2030年までに出生率2・07が確保できれば50年後に1億人程度で下げ止まり…その間は人材資源の最たるもの=女性の力の活用だという論理展開になっている」(6月13日)そして「政権発足後に女性の就業者数は53万人増加した」(6月24日)と胸をはった。


 だがその内実は?最新の総務省「労働力調査」によれば、本年5月の「役員を除く雇用者」のうち、女性の正規雇用者は実に久しぶりに4万人増加(前年同月比)したものの、非正規は20万人増加している(男性正規は2万人減、非正規は10万人増)。生産年齢人口減少と雇用劣化のアベノMIXを止めなければ、50年後よりはるか以前に、社会保障制度の崩壊または財政の破綻は避けられない。

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