ギャンブル(賭博)は、たった一度の人生を狂わせ、無数の悲劇を生んできた。
日弁連は今年5月に出した「カジノ解禁推進法案に反対する意見書」でギャンブル依存症について、「慢性、進行性、難治性で、放置すれば自殺に至ることもあるという極めて重篤な疾病」と規定、カジノ解禁について、多重債務問題再燃の危険性、青少年の健全育成への悪影響など社会に流す害毒を指摘する。
意見書は次に「いったん発症したギャンブル依存症への対策は非常に困難であり、むしろギャンブル依存症の患者を新たに発生させない取組みこそが重要」と強調している。
では、日本人のギャンブル依存症の実態はどうか。成人の依存症について調査している厚生労働省の研究班(研究代表者=樋口進・久里浜医療センター院長)は去る8月、ギャンブルやアルコールの依存症、ITの依存傾向に関する全国調査の結果(推計)を発表した。
このなかでパチンコや競馬などギャンブル依存症は、成人人口の4・8%に当たる536万人に上る。ギャンブルについては、国際的に使われる指標「病的ギャンブラー」(依存症)に当たる人が、男性で8・7%、女性で1・8%
(いずれも成人の人口比)であることが明らかになった。
日本の4・8%という数字は、米国(02年)1・58%、香港(01年)1・8%、韓国(06年)0・8%と比較して際立って高いことが分かる。このことについて研究班の尾崎米厚・鳥取大教授(環境予防医学)は、「パチンコなど身近なギャンブルが全国どこにでもあることが海外より率が高い原因ではないか」と分析する。
全国各地の人口の多い町の駅前には必ずと言っていいほどあるパチンコ店、それに競馬、競輪、競艇の公営ギャンブルと日本にはギャンブルが溢れている。それらが生みだしているギャンブル依存症の全体像を明らかにし、その対策を講じることこそ緊急の課題というべきであろう。
カジノ解禁はこうした社会の要請に逆行する。カジノが利益を上げるためにより多くの賭博客をカジノ場に入れようとするのは当然であり、カジノ解禁でカジノが設置されれば、ギャンブル依存症患者が増えるのは避けられない。日本人成人のギャンブル依存症者の比率はさらに高まるだろう。
ところがカジノ解禁法案にはそのことへの対策は全くない。それどころか推進側には、カジノの収益で依存症対策を行うという意見がある。本末転倒も甚だしいと言うべきだ。
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