「『カジノを』首長走る」、朝日新聞10月17日付2面に大見出しが踊った。記事は、政府がカジノを中心とした総合型リゾート施設(IR)の第一号に認定する自治体として「評価の高い」大阪と沖縄の事情や状況を解説している。
カジノ誘致には全国で20程度の自治体が名乗りを上げて関心を示しているが、大阪、沖縄に次いで評価が高いのは横浜市。ちなみに石原慎太郎知事(当時)が「お台場にカジノを」とぶち上げた東京は、知事交代で一気に機運が後退した。
大阪府と大阪市は大阪湾岸の夢洲(ゆめしま)にカジノを誘致するために奔走しているが、その最大の動機は府6兆300億円、市4兆8000億円という巨額の負債。カジノ開設による経済効果で借金を返そうという魂胆だ。沖縄は辺野古新基地で返還される普天間飛行場などの跡地利用と振興策が目的だ。
大和総研は、カジノがもたらす経済効果を狙った誘致で、横浜、大阪、沖縄に開設した場合の経済波及効果は約7・7兆円で、五輪開催の約3兆円を大幅に上回るという試算をはじいている。
問題は、そう簡単に問屋が卸してくれるかだ。カジノが垂れ流すギャンブル依存症や犯罪、多重債務問題の再燃などといった害毒に目をつむって、経済効果≠追い求めても、カジノは割に合わないという結果がある。
安倍晋三首相が今年5月に視察し、カジノをアベノミクスの「第五の矢」にと構想したシンガポールはどうなっているか。阪南大学流通学部の桜田照雄教授は、10月8日の院内集会「カジノ解禁法案について考える」で、シンガポールのカジノ収益は頭打ちで停滞していると指摘。
一方でギャンブル中毒が深刻化しており、カジノ立入り制限の申告件数者が2010年は183件だったのが、今年6月には21万5331件と幾何級数的に増大していることを明らかにした。しかも、1948年から国民総背番号制を導入し、政府が国民一人ひとりを「把握」している国家ですらうまくいっていないと指摘した。
また、日弁連の多重債務問題ワーキンググループ座長の新里宏二弁護士は、10月8日の院内集会で次のように述べた。
ギャンブルの経済的プラス、マイナスの試算がある。韓国の場合、負の影響が78兆ウオン、ギャンブル全体の売り上げは16兆ウオン、60兆ウオン強がマイナス。アメリカのニューハンプシャー州が今年、合法化を否決した。その反対する31項目の中に「カジノの費用が税収を上回る」という調査結果がある。
今回の法案にはそうした負の影響が全く盛り込まれていない。いい加減だ。少なくとも日本で初めて民間の賭博場を設けるというなら、どれだけのメリットがあるか、デメリットがあるか、試算した上で提起すべきだ。
そもそも経済的メリットがあっても、人間がだめになっていくようなシステムを経済政策にすることに強い疑問を持つが、最低限のことすらできていないのがこの法案だ。
新里弁護士はこのように述べ、「廃案にするために日弁連も全力を挙げる」と強い決意を表明した。
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