ユーロ圏に加入するギリシャで、債権団のEU (欧州連合)、ECB (欧州中央銀行)、IMF(国際通貨基金)に突き付けられた財政緊縮策の是非を問う国民投票が7月5日に実施された。18歳以上の有権者985万人、投票率62・5%。結果、「反対」61・31%、「賛成」38・69%とチプラス首相の「脅しに屈しない」との呼びかけに応える形になった。
トロイカと通称される債権団が取り仕切る金融支援は、リーマンショック後の2010年の1100億ユーロ(7月10日現在1ユーロ=135円)、12年の1300億ユーロに次いで3度目。過去2度の支援にも拘らずGDPは08〜14年に25%減少。支援条件の緊縮策で国民生活が圧迫されたからだ。この3月の失業率は25・6%、若者15〜24歳のそれは55%に達し、今回の緊縮策も付加価値税増税、早期退職制度の縮小、年金受給開始年齢の引き上げなどショック政策が並び、「これ以上緊縮できない」と怨嗟の的になった。
EU加盟国28カ国、人口5億人、GDPは世界の24・6%。うちユーロ圏19カ国3億3500万人。ギリシャのGDPは1790億ユーロ、人口1099万人、問題の債務残高はGDPの177%、3130億ユーロ(約43兆円)。そのうちユーロ圏の対外債務は1840億ユーロ。なかでもドイツは682億ユーロと最大の債権国、IMF・ECBの395億ユーロを上回る。
「ユーロ圏に残るか離脱か」「デフォルトか」。脅しの集中砲火の中、ギリシャ国民は「ノー」と答えた。労働者や年金生活者の8割が「反対」し、富裕層の8割が「賛成」した。
ここにユーロ圏の金融システムは金融資本を中心にした富裕層の利益のために機能していることが暴露された。政府債務は富裕層の金の安全性を税金で担保する仕組みで、その立て直し(緊縮策)は富裕層の利益を確保するために行われる。デフォルトにより損をするのは富裕層であり、国債とは縁のない国民は被害者なのだ。
メルケル独首相は「支援は改革と引き換えだ」と凄んだ。改革=緊縮政策は結局、ドイツ経済界の利益を守ることが狙い。ドイツは東西統一後の困難を乗り切り、「欧州一の経済大国」「EUの盟主」となった。
その権威の源泉は旧東独をはじめ東欧を部品製造地域に組み入れて、低廉な労働力を利用できたこと。また、国内では社会民主党と緑の党の「赤緑連合」政権で新自由主義的改革を断行、安い通貨ユーロで輸出力を増強したことにある。ギリシャは「人間の尊厳は不可侵」とするEU基本憲章に則り、憲章違反システムに挑戦した。
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