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2016.11.15
親の年金が生活費の中心
非正規と孤立が関わる


 「一億総活躍」で貧困拡大

 平和と人権守られる社会残す


 2人に1人が



 後期高齢者の私が、今とても気がかりなことのひとつが非正規が4割という若い人たちの労働環境だ。4割とは約2人に1人ということか。
 我が家の場合でも娘は正規だが息子は非正規である。先日夜9時ごろ娘に「変わりない、元気?」とケータイしたら「お母さん、私まだ会社に居るから」と言われてあせった。「月末じゃないのに」と返したら「いつも同じようなものよ」と。保険会社でこの春から小さな役職についたらしい。月末の残業ならそんなものかと思っていたのだが、いつもこれではと心配になった。土日は家で寝てる、とも娘は言っていた。娘の会社は、娘が入社後系列会社と何回か合併をくりかえしてきた。「その度に労働組合が弱くなってきた」と娘は言う。
 息子は非正規で働き、都内のアパートで7万円弱の部屋代を払って一人暮らし。ご飯はしっかり食べているか、と心配している。
 81歳の兄には息子が3人いて、長男は大手電機会社の社員。過日法事で久しぶりに会ったのでどんな仕事をしているの? と聞いたら「原子力です」とにこやかにかつ自嘲ぎみに答えてくれた。次男、三男は共に非正規で、その1人は百貨店系のスーパーでもう20年も働いている。朝は8時半に自宅を出て片道1時間半の通勤時間、夜は11時近くに帰宅する。正規の労働組合と非正規の組合は連携して活動しているという。「正規も自分たちだけでは人数が減ってやれないから」と話してくれた。甥が労働組合の活動していることは希望だし、嬉しかった。
 兄は4年前に義姉が亡くなってからは、次男、三男と暮らしている。10年前に胃がんの手術を受け、その後遺症もあるのかお腹がゴロゴロし腰も痛いという。さらに最近日付が分からなくなってきた。認知症か。生活費の中心は兄の年金が支えている。


 年金では不足


 私のもうひとつの身近な気がかりは高齢者の生活難、孤独、孤立なのだが、これは、兄宅の事例にもあるように、若い人の非正規増加と密接に関わっていると思う。
 ご近所の昔のPTA仲間の女性Aさんは72歳。非正規で働く息子さんと2人暮らし。年金だけでは不足で、特別養護老人ホームのお掃除のパートに週に4回、1日5時間行っている。契約先はホームでなく掃除派遣会社だとか。時給980円。5階建て100人が入居の施設で、階段と50以上もあるトイレ・ボックスを一人で掃除する。夏でなくても汗だくになると言っていた。それでも、それ以前のパート「太陽光発電」のセールス(個人の売り上げ成績が棒グラフで会社の壁に表示される)よりずっといいと。
 入居者や職員の何人かとも親しくなり、掃除が終わって屋上庭園で一休みするのも楽しいし、やりがいも感じる、とおっしゃっていた。戦争法に反対する2000万署名で伺ったとき、Aさんはジュースとお菓子を用意して待っていてくれた。


 希望捨てない


 何より私の大きな気がかりは戦争準備まっしぐら、原発推進を恥ともしない安倍政権の姿勢だ。「一億総活躍社会」などウソで固めた言葉をばらまきながら、社会保障費を削り、貧困層を拡大している。だがこの内閣は高支持率をいまだ得ている。なぜこのような転倒が起きるのか。有権者の多くが物事をリアルに見極める目と、政治につながる自分の暮らしを、主体的につくっていこうとする気力と努力に不足があるのではないか? 私はそんなふうに考えるのだがどうだろうか。
 もちろん、マスコミの権力べったり、権力寄りの報道はとんでもないことだが、よく観察すれば、権力に対抗する記事も量は少ないが新聞にもネットにもある。この戦後最悪の内閣の施策に抗い、反戦争、反原発、反貧困を掲げて日々闘っている人たちも多くいる。さる10 月16日の新潟での反原発の米山知事誕生はそれらの人々の努力と良き民意の結晶と言える。偉業を成し遂げることができたのだ。だから希望は捨てまい、と決意している。
 とりとめなく綴ってきてしまったが、私の残りの人生をよりよく生きたい、と今改めて思う。それには何より平和と人権が守られる社会を残して死んでいきたいと思う。そのことにつながる営みを日々編み出していきたい。今を生きる多くの人たちと楽しみも苦しみも分け合いながら暮らしていきたい。(野口照子)

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