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2017.01.17
安倍、トランプの背景は同じ
トランプ政権と日本


  ---なぜ、何が、私たちは何を〈上〉
                    新社会党副書記長石河 康国



 失望と政治不信で誕生 

 トランプ政権の出現を私たちが受け止めるには、安倍政権との出自の同質性を見て置くことが大事である。
 ソ連社会主義の崩壊で資本主義の利潤追求への抵抗勢力が弱体化し、米英日で採られていた新自由主義的政策が21世紀初頭をはさんで世界を制覇してきた。石油資源を狙う米国ネオコンによるアフガニスタン、イラク戦争とテロの憎しみの連鎖、格差と貧困の拡大、金融資本の投機による新興国国民経済の混在が拡散した。日本では小泉構造改革が、米国ではレーガンからJ・ブッシュにかけての政策が社会のひずみを深刻化した。
 しかしイラク戦争の失敗は主要国の共通認識となり、新自由主義政策の無理は「リーマンショック」となって爆発した。新自由主義への一定の反省が政治的な変化をもたらし、2009年、オバマ政権と鳩山反自民連立政権が生まれた。
 オバマ政権は、金融資本の投機を規制し、国民皆保険制度を創設した。イラク・シリアから撤退し、「核のない世界」をアピールし、イラン、キューバとの関係を改善した。しかし巨大資本とネオコン勢力の抵抗は強く、株価は上昇しても富は一部に集中し、製造業は衰退し、雇用増も低賃金のサービス産業関係が主で格差は拡大し続けた。
 鳩山政権も、福祉や医療保険、労働などで格差と貧困に歯止めをかけようとした。しかし不徹底で重要政策でつまずいた。その間も民衆の生活は耐え難くなり、失望と政治不信を利用して、安倍政権が復権し、橋下維新的な勢力が伸長した。それから4年、没落中間層の憤懣は、親ウォール街とみられたクリントンではなくトランプに吸収された。
 このように、政治が資本の強欲を規制するのを容認できない勢力が、資本の犠牲者の絶望を利用して登場させた点で、安倍とトランプは同質なのである。


 軍事的緊張と経済戦争


 「非ウォール街・白人労働者の味方」の仮面をあっさりすてたトランプ政権の経済政策は、何の整合性もない無茶苦茶なものだ。巨額の財政赤字なのに法人税率を大幅に引き下げ、他方で1兆ドルのインフラ投資をする。金利、為替、貿易収支、株価など「あっちを立てればこっちが立たず」の類で、いずれ大混乱に陥る。ここ数十年間、新自由主義政策が生んだ経済的困難に対して各国政府があらゆる政策を繰り出しても破綻したのに、トランプ・マジックで解決できるはずがない。利潤衝動のために経済はグローバル化してきたのに、一国経済で資本の要求が収まるはずがない。規制が緩和されれば、金融資本は世界中を投機でさらにかきまわす。
 そして派生する問題はすべて米国の「99%」にだけでなく、アジアや中南米の新興国や中国、日本に押しつける。新興国や中国からはすでに資金が米国に流出し、一斉に株価が下落しはじめた。アジア通貨危機が再燃する。TPPは頓挫しているが、トランプ政権は日本に円安是正を求め、二国間交渉で無理難題を提案するだろう。これを奇禍とする安倍政権は、国際競争力強化、米国資本つなぎとめを口実に、規制緩和をトランプ・スタンダード並にして労働者の搾取強化と福祉の民営化、安全安心な市民生活の破壊を目論む。
 軍事面で中東はプーチンに任せ、「リバランス」戦略で対中国シフトを強めるが金は節約する。「二つの中国」をちらつかせて中国とは熾烈な経済戦争を起こし軍事的緊張も高める。在日米軍はより合理化するが、沖縄などの兵站基地としての機能は強化して金は日本に払わせる。金と引き換えに日本に核保有のゴーサインすら出しかねない。アジアの緊張の度合いによっては、「お試し改憲」ではなく直ちに9条改悪の環境がつくられよう。安倍政権はこれらの環境を最大限利用する。
 今年行われるオランダ、ドイツの総選挙、フランスの大統領選ではファッショ的な勢力が、トランプに呼応して既成政党を脅かすと言われている。これら世界の流れとファシズムの関係、そして日本では何が問われるかは次号で考えよう。

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