安倍晋三首相は2月14日に首相官邸で開いた第7回働き方改革実現会議で、企業の長時間労働是正に関する案を示した。残業時間は年間720時間(月平均60時間)を上限に罰則付きで法定化を目指すが、繁忙期など1カ月当たり100時間までの上限時間は「設ける」などの抜け道を作ろうという意図がある。
3月末にとりまとめる実行計画に政府の焦りが見えてくる。会議で安倍首相は「非常に重要な議論であり、多数決で決するものでない」と合意での形成を強調するが、繁忙期を理由に長時間労働の容認は崩そうとしない。
安倍政権が進める「長時間労働の是正」は、財界の思いを丸写しにしている。2月2日の衆院予算委員会で「1カ月で100時間超の残業」「2〜6カ月平均で月80時間超の残業は過労死につながる」「過労死するまで働かせてもOKだというメッセージはヤメロ!」「過労死ラインぎりぎりならよいと言ったら、リスクが高まるばかりだ」と野党からの追及があった。
本来、政府は「人を入れるべき」規制改革をしないといけない。総額人件費の削減に力を入れてきた企業の体質を変えずに過労死を無くし、残業を減らすことはできない。
企業の声を丸呑み
安倍首相は、「長時間労働の是正」を掲げながら、言葉巧みに経営側の要望だけを丸呑みにする。これまでの大臣告示(月45時間、年間360時間) から、残業限度時間の上限を例外年間720時間(月平均60時間)まで緩和させる。さらに繁忙期の100時間の残業も容認しようとする。これらはザル法である。
一人の労働者が休むことで、代務者の発生する建設業や運送業、企業の研究開発部門などは、人の増員なしに「残業の是正」などできないし、「健康と安全」が守れない。上限時間の規制は今後の検討課題ですまされるものではない。勤務間のインターバル規制も同様に、法規制の必要性を見送った。経営側の要望だけを受け入れた。 そもそも、「労働政策」などについての公的審議会「労働政策審議会」(労働・経営・公益代表各10人)は存在し、機能もしている。もはや「働き方改革実現会議」などの必要性はないし、安倍首相の私的諮問機関にすぎず「働き方改革実現会議」などは必要としない。 (宮川)
|