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2017.03.14
17年度予算年度内成立
軍事を優先生活は軽視


                  
 総額97兆4547億円(16年度比0・8%=7329億円増)と過去5年連続で膨らんだ2017年度予算案は2月27日、与党などの賛成多数で衆議院を通過、参議院で審議が行われているが、衆院優位の憲法の規定により、年度内の成立が確定した。改めて17年度予算案を検証する。

 雀の涙の「給付型」 

 予算案の特徴は、国民の不満を高めないための財政出動と一時しのぎ政策、そして新重点の軍事費にある。
 「一億総活躍社会の実現」や「働き方改革」を掲げ、保育士・介護人材等の処遇改善、返済不要「給付型奨学金」の創設、非正規労働者の正社員転換や介護休業拡大等で企業助成などを並べるが、一時しのぎだ。
 とくに、「目玉」とばかりに組まれた「給付型奨学金の創設」の対象者は、住民税非課税世帯で学年当たり2万人分。年間で6万人と推計されている住民税非課税世帯で大学進学の3分の1でしかない。その金額も国公立大で自宅通学2万円、国公立で下宿・私立大の自宅通学で月3万円、私立で下宿が月4万円の3段階となっている。私立に比べて“安い”といわれる国公立の授業料の半分も賄えないことをみれば、抜本改革に程遠いと言わざるを得ない。
 一方で、社会保障予算は自然増を概算要求からさらに1400億円削り、とくに高齢者の自己負担を増加させた。昨年の臨時国会で年金削減法を強行し、70歳以上の医療費上限額の引き上げは来年度から実施される。

 軍事研究費は18倍

 対照的に、防衛省予算は5兆1251億円と過去最大、5年連続で増額だ。「南西地域の島嶼防衛」「弾道ミサイル攻撃への対応」に加え、新重点として「技術優越の確保」「防衛生産・技術基盤の維持等」を掲げる。
 具体的は、@無人化Aスマート化・ネットワーク化B高出力エネルギー技術等の研究を挙げ、水中無人機研究9億円などを計上する。また大学・企業等の研究を軍事につなげる「安全保障技術研究推進制度」を昨年度6億円から110億円へ大増額した。15年度は3億円だからすさまじい増額である。
 最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費は6機で880億円、欠陥輸送機オスプレイは391億円で4機と、アメリカから正面装備を続々と購入する。
 防衛予算は補正で膨らみ、さらに増えることが予想される。現に16年度は当初予算が5兆541億円だったが、3次にわたる補正で1817億円を積み増し、計5兆2358億円と過去最大となっている。
 このほか、広義の軍事費に分類される海上保安庁予算は2106億円で同庁設置以来の最大規模。しかも16年度2次補正で674億円、3次補正で30億円を組んだ。尖閣諸島配備の大型巡視船建造と要員増が反映し、対中国を最優先の配分となっている。

 GDP比1%の枠

 安倍政権の軍事費膨張は、アメリカのトランプ政権発足でさらに加速する兆しがある。安倍晋三首相は日米同盟のあり方について、「安全保障の根幹は自らの努力だとの認識に基づき、わが国としても防衛力を強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図っていく」(1月25日の参院本会議)と述べ、軍事力再構築の方針を打ち出しているトランプ新政権と歩調を合わせる強い意欲を表明している。
 また、これまで維持してきた軍事費の国内総生産(GDP)比1%枠が、トランプ政権の圧力と国内の軍事産業などの圧力によって取り払われる空気が醸成されようとしている。
 中曽根康弘元首相が会長を務める世界平和研究所は1月に発表した報告書で「当面はGDP比1・2%を追求すべき」と主張する。
 18年末の次期中期防衛力整備計画(中期防、19〜23年度)の策定に向けて政府・自民党内で「GDP比1%枠撤廃」の議論が活発化してくることが予想される。

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