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2017.05.02
地公法改定
ワーキングプア温存

                 
 現場の闘いで改善を 


 「地公法・自治法の一部改正法案」は4月14日、参議院で4項目の附帯決議が付されて可決、衆議院に送られた(改正法案の概要は、本紙4月11日号に掲載)。本号では、問題点に絞って解説する。

☆ 自治体における非正規職員には、一般職非常勤(地公法17条)、特別職非常勤(地公法3条3項3号)、臨時職員(地公法22条)の3種類があり、2016年4月現在約64万人と総務省は報告している。これらの中で、労働者性の高い者は、原則一般職非常勤に移行し(49万人が該当)、新たに地公法22条の2に規定し「会計年度任用職員」と呼ぶとした。現在は、根拠規定によって権利の内容も異なっている。問題が多いのは、特別職非常勤である。
 
 ■ 労働契約関係から任用関係に逆戻り 
 
 特別職非常勤は、本来嘱託医等の専門職を対象としたものであるが、多くの自治体では一般職に近い職務でも特別職として雇用してきた。 現在の特別職非常勤の雇用関係は、労働契約関係であり、任用更新(雇用継続) される。法案の「会計年度任用職員」では、「新たな職に改めて任用」となっており、1年ごとの「新たな任用」となる。そのため、継続雇用の保障がなく、自治体の一方的な都合で雇止めが行われる危険性がある。 附帯決議1項では、「国の通知で、再度の任用が可能である旨を明示すること」と謳っているが、本来、会計年度任用職員という名称自体が問題なのである。

 ■労働基本権のはく奪、組合つぶし 

 特別職非常勤には、労働組合法と労働基準法が適用される。そのため、団体交渉権(大阪教育合同労組事件の最高裁判決〈2015・3・31〉で確定)、スト権はあるし、正規職員が適用除外になっている労働協約・不当労働行為制度の適用、労使対等原則の適用があり、労働委員会への提訴ができる。勤務条件に関する労働基準監督署への訴え等も可能である。
 「会計年度任用職員」になると、正規職員と同様に労働基本権の制限を受けることになり、問題あった場合には人事委員会に提訴することになる。しかし、人事委員会が非常勤職員に対して、労働基本権制限の代償措置と勧告を行うことは想定していない。
 事務職の年収で比較すると、正規公務員が630万円に対し、非正規公務員は170万円程度言われている。正規の4分の1に過ぎない(民間の賃金水準では6割程度と言われている)。労働基本権を奪い、合同労組やユニオン組合を潰し(首切りしやすいように)、「同一労働同一賃金」の目標も放棄し、「官製ワーキング・プア」を温存するものに他ならない。

 ■非常勤はパート扱い、手当等を支給せず

 「会計年度任用職員」は、フルタイム(正規公務員に勤務時間は1日7時間45分)の場合には、正規同様に給料、旅費、諸手当も出すが、パートの場合には報酬、実費、期末手当(義務ではない)しか出さないようになっている。正規職員の勤務時間を下回る場合には、すべてパート扱いするという内容である。
 自治体の業務は、3割を超えると言われる非正規職員によって担われており、その人たち抜きには回らなくなっている。正規公務員との格差だけでなく、非正規職員の間でのフルタイムと短時間での不公平も問題である。地公法13条の平等扱いと差別禁止、労働契約法20条の「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」の精神を活かした待遇をすべきである。

 ■財源不足を口実のサボタージュを許さず!

  施行は、3年後の2020年4月である。その上に、自治体では地方交付税の減少、地方税の減収等で、制度改正を悪用する危険性が高い。附帯決議3項でも、「財源確保努力」が謳われたが、現場での闘いが重要となる。 (清水英宏)

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