新社会党
  1. トップ
  2. 週刊新社会
  3. 経済
  4. 2019.02.19
2019.02.19
19年版経営労働政策特別委員会報告
企業自決で賃金抑制
ベアを否定 手当・一時金に固執
 
 

 経団連は1月22日、毎年慣例にしている春闘の経営側の指針となる「19年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。経労委報告は、冒頭から「自社自決」を掲げ、賃金引き上げを否定している。 

 「収益が安定的に拡大している企業においてはベアの選択肢もある」など期待感を持たせるも、労働側の力量の弱さにつけ込み、数値も示さずベアを封印する。

 昨年経団連会長に就いた中西宏明会長(日立製作所)は、「企業労使は、自社に適した働き方や処遇のあり方について徹底的な議論をしたい」「自社の収益に見合った前向きな検討が望まれる」など、「企業自決」に持ち込むコメントを繰り返し、徹底して賃金抑制に重点を置いた。

 18年春闘では安倍晋三政権にすり寄った榊原定征前経団連会長は、「個人消費の活性化に向けて3%賃金引き上げ」を公言した官製春闘に呼応していた。

働き方改革と生産性向上
第1章、働きがいを高める働き方改革と労働生産性向上
 「働き方改革」の名を使えば合理化も許されるのか。「働き方改革」と、イノベーション(モノ・しくみ・組織の改革) を羅列して、労働生産性向上(合理化)を迫っている。

雇用・労働分野における諸課題
 雇用関係について突っ込んだ見解を示す。高度プロフェッショナル制度やフレックスタイムの活用で総額人件費削減を煽る。正社員と契約社員の格差是正に説明義務は整備されたとして、契約社員の拡大に比重を置く。労働側は、最低賃金を今すぐ1000円、めざせ1500円を主張している。

 しかし、経団連は最賃は急激な引上げが続いていると非難、特定最低賃金(産別最低賃金)は廃止すべきと毎年繰り返す。

2019年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス
 経営側は、内部留保446兆円など企業の好調には触れず「多様な方法」に導く。月例賃金を避け、一時金、手当を重視させる。月例賃金は、前向きな検討の流れに逆行すると労働側を非難する。「中小組合が目安にする総額1万500円以上」は労使交渉を阻害させると搾取の論理から非難する。

 「経営側の基本スタンス」の項では、資本の本音が見える。賃金決定を「自社の経営状況に見合った年収ベースが基本。賃金引上げ方法は多様な選択肢の中から検討する」と月例賃金にこだわるな、ベアを否定して、手当てや一時金でこと足れりと迫る。

 企業は、賃金引上げは多様な方法があると強調する一方で、総額人件費の削減で、賃金引上げを相殺させる。春闘時に賃金引上げとバーターに合理化提案が常態化されている。 しかし、経労委報告では、「自社の経営状況」で労働生産性向上の名の下に「合理化」を受け止めてほしいと迫っている。

 福利厚生が見直され、改悪され、人減らし合理化で、ますます総額人件費の削減が進んでいる。だからこそ「多様、柔軟」などの言葉を羅列して、生産性向上の名の下に搾取強化の狙いがある。

春闘が「労使友好」の場

 「19年版経労委報告」に、賃金引上げの経営側スタンスが見えない。「自社に適した働き方」を強調して、「賃金引上げは収益のある企業」と「企業自決」を繰り返す。毎月勤労統計不正の発覚は、18年の実質賃金を下方修正した。6月時のプラス3・3%は、2・8%に修正され、アベノミクスの偽装が確定した。それでも安倍首相は、藁をもつかむ思いでか連合の集計を持ち出し「今世紀最高の賃上げ」が続いていると、国会答弁を繰り返した。

 17、18春闘の回答は、連合集計1・98%、2・07%。経団連集計2・34%、2・53%で、要求額の半分にも届かない。安倍官製春闘の3%水準にも及ばない。経労委報告は、春闘を「良好な労使」関係で企業の発展に寄与していると「褒め殺し」をする。

 企業の低賃金合理化政策で「健康で働き続けることも困難になっている」労働者の現状では「労使良好」はない。「労資交渉」を闘争などと呼ばず、個々の交渉が自然な流れ、労使が収益第一を共有した春季労使交渉にしたいと結論づける。労働組合の闘いの頂点である春闘が「労使友好」の舞台にされては、労働者の権利は失われてしまう。

 2月1日、経済三団体の一つ経済同友会が記者会見をした。労働側のベースアップにこだわる姿勢を非難した。「予測不能な時代に、いつまでも右肩上がりのベースアップって、アホじゃねえのか」と。毎年さんざんに収益を伸ばしていることを棚に上げ、労働者の「生活できる賃金要求」を「アホじゃねえのか」と切り捨てるところに経営側の本音が聞こえる。

 経営側のスタンスはハッキリした。「ベア否定」「年収ベース」「自社自決」の三点で春闘に挑んでくる。

 ↑上にもどる
一覧へ
トップへ