学生の就活ルールをどうすべきか―経団連は2018年10月、採用活動の解禁日などを定めた就活ルールの廃止を打ち出した。あわせて今後は経団連に代わって政府が主導してルールを定めていくことで、経団連と政府は通年採用の拡大で合意した。
しかし、そこには大きな問題が潜んでいる。通年採用の裏には通年解雇が控えるからだ。学生の就活ルールだけに終わらず、雇用形態のさらなる改悪につながる。
例えば、経団連の中西宏明会長は、5月7日の定例会見で終身雇用について、「正直言って、経済界は終身雇用なんて守れない」などと発言した。自動車業界トップ、トヨタ自動車の豊田章男社長も5月13日の日本自動車工業会の会長会見で、中西会長と口裏を合わせるように「なかなか終身雇用を守っていくのが難しい局面に入った」と日本型雇用形態の放棄に言及した。
かつて欧米の経営者は、「終身雇用と年功序列が日本企業の強さの源」と指摘。低賃金の初任給から始まり、年功序列で少しずつ上がる賃金で家族も含めた生活を維持しようと定年まで汗水垂らして働いて企業に尽くしていると評価した。
その恩恵を一身に受けてきた世代の経営者が「終身雇用の保証はない」などと切り捨てようとしている。「労働流動性が進み、派遣や中途入社など以前より会社を選ぶ選択の幅が広がった。多様性が進み、すべての人がやりがいのある仕事に就けるチャンスが広がっている」と、都合の良いことだけを挙げるが、これはいつまでたっても昇給のない低賃金に労働者を押し込もうとする攻撃だ。
労働者の人生はますます先が見えなくなる。見えてくるのは採用をあっせんする業者の儲けと、「いつでも解雇、いつでも雇用」のより一層の低賃金と企業に対する隷属構造だ。
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