30年前の1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊した。翌年10月には、東西ドイツ統一が、西独が東独を併呑するかたちで実現した。本家のソ連邦も1991年12月に崩壊し、ソ連圏の社会主義世界体制は終わりを告げた。
冷戦もこれで終わり世界は平和になるのかと思いきや、その「期待」は裏切られた。米ソ両超大国がはめていたタガが外れ、あちこちで民族間・宗教間紛争が勃発。憎悪が高じその壁が高くなった。
資本主義は、社会主義という対抗モデルがなくなったため先祖がえりして新自由主義が世界を席巻した。社会は分裂し、富者と貧者を隔てる壁が高くなった。
「壁」が崩壊したドイツでも、二つの新たな壁が作られている。一つは、ドイツ人と難民を隔てる壁である。とくに2015年に百万人を超える大量の難民を受け入れて以降、反移民、反イスラムの運動が活発になり、市民感情の間にも浸透している。かくして排外主義的な政党(AfD)が連邦議会や州議会に進出し先日のチューリンゲン州(旧東独圏)議会選挙では、得票率23・4%で左翼党に次ぐ第二党になった。第二には富者と貧者を隔てる壁である。貧困状態にある者は17年度に19・7%にも上る。
最近の特徴は、年金や賃金収入があっても、家賃の高騰で食費に十分な金を回せない人が増えていることだ。彼らは慈善団体の無料食料配給所への依存を余儀なくされている。 配給所は全国に二千以上あり、利用者数は160万人(人口の2%)に上り、かつ増加の一途だ。 この壁はいつ、誰によって壊されるのだろうか。
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