第2次安倍内閣発足以降、官僚による忖度は目に余るが、それには14年の「内閣人事局」の発足が決定的だった。官僚たちはひたすら政権の顔色をうかがう。
内閣府が年2回作る「中長期の経済財政に関する試算」もそれで、本年は1月17日の経済財政諮問会議に提出された。ここでは毎回、安倍におもねる「成長実現ケース」と、常的な「ベースラインケース」が併記されるが、前者のケースは達成されたためしがない。
今回の成長実現ケースでは19年度の実質GDP成長率を0・9%、名目では1・8%とする。
会議後の記者会見では担当の西村康稔大臣に対し、次の質問があった。「今年の骨太方針には20年頃の名目GDP600兆円を目指すとあります。しかし今回の試算では成長実現ケースでも20年度の名目GDPは約570兆円に留まり600兆円超えは23年度の見通しです。達成時期が年々後にずれてきた、当事者としての受け止めは?」。むろん西村大臣ははぐらかした。
日本経済新聞は2月12日「逃げ水のGDP600兆円」と大書して次のように報じた。曰く「目標達成時期は後ズレ。試算の前提が現実離れしている」「背伸びした前提」「600兆円の目標は『画餅』。神通力は失われた」「強い経済と財政健全化の両立をめざすシナリオはすでに大きく狂っている」。そして「目標達成が近づいたのはGDPの算出方法を見直した17年のみ」として一覧表を掲げてくれる。
別の紙面ではトランプ大統領の予算教書を「選挙公約」「試算は極めて楽観的」とする。現在の日米トップは良く似ている。
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