シリア情勢について大手メディアは昨年から「アサド政権の反政府デモへの武力弾圧」を流している。国連は、昨年3月から現在までに5400人が犠牲になったと推定している。一方のシリア当局は、暴力事態の背後にアルカイダ関連の組織があり、警察官・国軍兵士2千人以上が殺されたと非難している。2月4日午前(日本時間5日未明)、国連安保理は中国とロシアの拒否権により、アサド大統領退陣を求める決議案を否決、首都ダマスカスでは5日、市民が否決を喜ぶデモを行った。昨年12月末からアラブ連盟22か国の監視団160名が同国で訪問調査をしてきたが撤退し、今回、報告書は安保理に提出できなかった。メディア情報と現実の乖離があったと報道されている。
結果についてクリントン米国務長官は制裁強化、リーバーマン米上院議員はアラブ連盟とともに軍事作戦の選択に向かうと強調した。ワシントンとロンドンではシリア大使館に抗議行動が起こされた。シリア反政府勢力側は5日から2日間にわたるデモを呼びかけている。
同国では焼身自殺事件を発端に昨年1月末から反政府デモが続くが、同時に政権支持デモも進行、昨年十月にも国連安保理で決議案が否決された経緯がある。人口は2千万人余り、日本の面積の半分ほどの国で、60−70年代の変革で成立したバアス党政権下で計画経済を実施してきている。米国による「テロ支援国」指定と関連する制裁措置を受け続けているにもかかわらず、石油を産出することから経済は比較的安定的に推移してきているが、ゴラン高原をめぐりイスラエルと厳しい軍事対立下にあり、07年には空爆された。イラク・レバノンの戦争避難民も多数滞在している。
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