ブラジル司法当局は3月17日、国際石油メジャー・シェブロン社(本社/米カリフォルニア)と海底掘削会社トランスオーシャン社(本社/スイス)の経営責任者17人のブラジル出国禁止命令を出した。同国海軍が海上を覆う油膜を発見、シェ社も15日、海底の油漏えいを認め、同国国家石油庁(ANP)に生産停止を申請した。
シェ社は昨年11月にも同じ地区、リオデジャネイロ市沖合370キロのフラージ鉱区海底で事故を起こしたばかりで、新規油田の掘削禁止命令を受け、ブラジル史上最高額の110億ドルの損害賠償訴訟で係争中である。検察当局は当事者の刑事訴追を決めた。
トランスオーシャン社は2年前4月のメキシコ湾ルイジアナ州沖合、ブリティッシュ・ペトロレアム(BP)社が操業する深海油田の爆発・原油流出事故(労働者11名死亡・400万バレル超流出)にも関わっていた。この事故はオバマ大統領が「米史上最悪の環境汚染事故」と述べるなど85日間連続して海底から噴出が続いた。BP社はこれまでに清掃作業と補償金に計75億ドル支払っているが、今年3月3日に原告10万人(漁業者・住民・清掃作業者や地元企業など)と補償金78億ドルで和解が成立した。
しかし、BP社は事故の責任を認めておらず、米連邦政府・州政府は和解せず、裁判は続行している。現在、原油価格が08年以降で最高水準なことからBP社は破たん間際状況から再建のプラス要因を得、手元資金を増やしている。
いずれの事故も「技術的不手際」が指摘されているが、関係企業は「責任のなすり合い」と「補償費用」で解決する姿勢を変えておらず、事故再発防止は後回しにされている。
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