5月6日、仏で大統領選挙、ギリシャでは総選挙の投票が行われた。仏では現職サルコジ大統領が敗退し、17年ぶりに社会党政権が誕生した。ギリシャでは過去30年間、二大政党として代わる代わる政権を担ってきた新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が両党合わせても過半数に届かず、急進左派連合(SYRIZA)が第二党になった。
連立政権をめぐる13日、14日の交渉も決裂し、来月の再選挙になりそうである。いずれの国でも有権者がメルケル独政権主導の金融支援と引き換えの緊縮路線の拒否を示した結果となった。5月23日には非公式EU首脳会議が招集され、成長への取り組み・財政強化策・雇用が議題になるが、中東有事に向けたNATO体制強化も議題になる。
ギリシャ総選挙(定数300)では共産党(KKE)が過去30年で最高の得票率8・5%を獲得し、09年総選挙より5議席増、26議席を得た。今回選挙で躍進した急進左派連合は左派政権の連立を呼びかけたが、共産党は「穴の空いた救命ボート」として協力を辞退した。そこには「共通農業政策」「NATOの枠組み」など過去の政権の「EUの一方通行」政策に急進左派連合が沈黙しているからである。共産党は今回の選挙結果を独占との力関係における勝利ではなく、急進左派連合を中心に社会民主主義勢力が再編されると分析している。
ユーロ危機はポルトガル、アイルランド、イタリア、スペイン、オランダにも蔓延している。反動的・国粋主義的諸政党が各国で影響力を強め、EU圏で共産主義とファシズムを同一視するイデオロギーが浸透する中、「戦時経済」による解決は除外されていない。
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