昨年3月以来、シリアで戦闘が続いている。大メディアはシリア国民評議会(SNC)や「自由シリア軍」側からの情報を大量に流して「アサド政権が市民を弾圧し、虐殺している」と繰り返している。国営シリア通信SANA
(英語版)は最近、サイバー攻撃を受けて閉鎖され、政権側からの主張が阻止されている。
しかし、重要な視点は、@多数の国民が「自由シリア」を掲げる反乱勢力を支持していない点である。イラクやリビアでの経験のように「自由と民主主義をもたらす」戦争は政権転覆後、日常的なテロと暴力で犠牲者を出している。シリアも同じく多民族・多宗教国家である、ASNCがトルコのエルドガン政権、イスラエルのネタニヤフ政権、米国のオバマ政権と公然、非公然に外交努力を進めている事実、B多国籍の自由シリア軍の使用するサウジアラビアやバーレーン経由の最新兵器をどう見るかである。
米国の中東政策は、9・11直後の2001年9月にキャンプデービットで合意されている。背景は石油・ガス資源確保であり、多国籍企業グループによる「ナブッコ・プロジェクト」の完成である。
これはカスピ海、イラン、イラク、シリアからガスパイプラインを敷設、トルコを東西に横断し、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを通過してウィーン近郊まで約4000キロにわたって延ばし、ロシアのパイプラインに対抗しようとする計画である。予定では2013年建設、17年稼働である。
国際政治面からは、シリアのロシア海軍基地はNATOにとって障害であり、安定したアサド政権はイスラエルに都合が悪い。情勢は「アラブの春」から「NATOの春」に動いている。
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