ロシア政府は12月1日、ガス・パイプライン「サウス・ストリーム」の建設中止を発表した。このパイプラインは黒海経由で中東欧にロシア産天然ガスを輸送するものであったが、「欧州委員会の非建設的アプローチ」から断念、トルコ向けに切り替わることになる。
ロシアにとって供給先の多様化と不安定な通過国の回避という効果があり、欧州にとってはロシア産ガスの依存度を低めたいという目標にかなっており、現在のロシアとEUの関係を象徴する決定であるが、欧州、日本の計画参加企業は損失を被る。
一方でロシアは中国、トルコ、イラン、インドに視線を向けている。この転換にはウクライナの混乱が背景にあるが、長期的には外交関係にも影響してくる。
このプロジェクトの本来の目的は「欧州のエネルギー安全保障を強化する」ことであったが、通過国のブルガリア、ギリシャ、イタリア、セルビア、ハンガリー、クロアチア、スロベニア、オーストリアは供給先が不安定になる。
また、EUの計画への非協力は結局、自らのエネルギー自立を阻害し、投資の機会を失わせることを意味する。EUの政策についてブルガリアはロシアに対して建設許可を出さず協力したが(EUの圧力で)、セルビアとハンガリーは「この計画を頓挫させようとしている」として最初から最後までEUの立場に反対であった。
ウクライナ危機をめぐる米欧の対ロシア制裁は結果として米欧関係の亀裂を表面化させ、ロシアに地政学的利益を追求させることになった。
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