サウジアラビアによるイエメン空爆が3月26日から始まった。さらにヨルダン、エジプト、カタール、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートなどが空爆支援に加わった。商業施設、インフラなど公共施設や住宅地が集中的に標的にされ、国連によれば、被害は全土的に拡がり、民間人犠牲者は数千人に達した。
イエメンはインド洋とアデン湾、アフリカ、スエズ運河に続く紅海を見渡す重要な地点に位置しており、シーレーンの要衝である。バブ・エル・マンデブ海峡は幅が30キロしかない水路で、毎日数百万トンの石油を積んだタンカーが往来する。海峡を挟んだ対岸ジブチには米、仏、日本の基地がある。
今年1月、ハディ大統領がサウジアラビアに逃亡して以来、サウジ政府は「シーア派武装組織フーシ派がイランから援助を受けている」と主張して攻撃を開始した。
一方、イエメン国軍は逃亡した大統領派と以前のサレハ大統領支持派、また現勢力フーシ派の支持グループに分裂、国自体が英植民地時代の分割統治の残滓を引きずったまま今もなお部族国家で紛争が起きやすいところだ。
サウジ王家のイエメンに対する領土的野心はオスマン帝国時代までさかのぼり、1960年代にイエメンが南北に分離独立、90年に統一されたが、問題は持ち越された。
こうした歴史的条件にサウジアラビアと同盟関係の米国の世界戦略が重なり、イラク、リビア、シリアで力をつけたテログループも流入、グローバルな利害が衝突する戦場となった。
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